1 調和四点
同一直線上の相異なる有限な四点A,B,C,Dの座標をa,b,c,dとします。§A5.14 定義 1.1により、複比は次の式で表されます。
この値が−1のとき、C,DはA,Bに関して調和共役です。複比の式は、符号つきの長さの比を用いると、
(A,B;C,D)=AD/DBAC/CB
と書くこともできます。点の順序を変えると値が変わることがあるため、複比の記号では点の順序を指定します。
2 実戦の流れ
- 問題の4点・2本の割線を見つける。
- 有向比を複比へまとめる。
- 射影変換で計算しやすい配置へ送る。
- 不変な複比の等式だけを元の配置へ戻す。
射影で保たれる複比の等式を用いて、変換後の配置から元の配置の関係を導きます。射影は一般に長さを保たないので、像の座標値を元の点の座標値と同一視することはできません。
3 例:調和共役の座標計算
例 3.1. 同一直線上の三点の座標がA=0,B=1,C=2であるとする。CのA,Bに関する調和共役点の座標をD=dとすると、
(2−1)(d−0)(2−0)(d−1)=−1.となる。したがって2(d−1)=−d、d=2/3である。逆に、d=2/3を代入すると複比は−1であり、四点は相異なるので、この点が調和共役点である。
3.1 実戦問題と解答
例 3.2. 直線上の相異なる有限な四点A,B,C,Dが(A,B;C,D)=−1を満たすとする。射影変換によって三点A,B,Cをそれぞれ座標0,1,2の点へ送ると、複比は変わらないので、Dの像の座標は2/3となる。元の配置へ戻す等式は(A,B;C,D)=−1であり、元のC,DはA,Bに関して調和共役である。像の座標2/3は、元のDの座標を表すものではない。
4 有限射影と調和共役
問題 4.1. 相異なる二直線ℓ,mと、どちらの直線上にもない点Oをとる。m上にこの順に並ぶ相異なる点A′,B′,C′をとり、A′B′=B′C′とする。線分A′B′をA′D′:D′B′=2:1に内分する点をD′とする。
直線OA′,OB′,OC′,OD′とℓとの交点がすべて有限であるとし、それぞれA,B,C,Dとする。C,DがA,Bに関して調和共役であることを示せ。
解答.
直線mの正の向きをA′からB′へとる。A′,B′,C′の順序と等間隔の条件から、A′C′/C′B′=−2である。D′の内分比から、A′D′/D′B′=2である。したがって
(A′,B′;C′,D′)=2−2=−1となる。A′,B′,C′,D′は相異なる。O∈/mであるから、四直線OA′,OB′,OC′,OD′は相異なる。O∈/ℓであるから、これらの直線とℓとの四つの交点A,B,C,Dも相異なる。
二直線の外にあるOを中心とする射影で、四点と像がすべて有限であるので、§A5.14 定理 1.2により、
(A,B;C,D)=(A′,B′;C′,D′)=−1である。よってC,DはA,Bに関して調和共役である。▨
5 調和関係による長さの決定
問題 5.1. 非退化な三角形PABの辺PA,PBの内部に、それぞれ点Q,Rをとる。直線AR,BQの交点をT、直線PTと辺ABの交点をCとする。直線QRは直線ABと平行でなく、交点DはB側の延長上にあるとする。
直線ABと相異なる直線mと、どちらの直線上にもない点Sをとる。Sを中心としてA,B,C,Dをmへ射影し、像をそれぞれA′,B′,C′,D′とする。四つの像は相異なる有限点であり、m上でA′,C′,B′,D′の順に並んでいるとする。A′C′=6、C′B′=3のとき、B′D′を求めよ。また、元の配置でAC=4、CB=3のとき、BDを求めよ。
解答.
Rは辺PBの内部にあるので、P,Bは直線ARに関して反対側にある。Qは線分PAの内部にあるので、直線ARに関してPと同じ側にある。したがって、線分BQは直線ARと内部の点Tで交わる。線分BQの内部は三角形PABの内部にあるので、Tも三角形の内部にあり、線分ARの内部にある。半直線PTは角APBの内部を通るので、辺ABの内部の点Cと交わる。
三角形PABの各辺の内部点Q,R,Cに§A5.9 定理 1.3を適用する。AR,BQ,PCは点Tで交わるので、
QPAQRBPRCABC=1である。同じ三角形の横断線QRDに§A5.9 定理 3.1を適用する。Q,Rは辺の内部にあり、DはB側の延長上にあるので、通常の正の長さで表すと、
QPAQRBPRDABD=1となる。すべての長さは正であり、二つの式を比較して
BCAC=BDADを得る。直線ABの正の向きをAからBへとる。CはA,Bの間にあり、DはB側の延長上にあるので、
(A,B;C,D)=−BC⋅ADAC⋅BD=−1である。Sは両直線の外にあり、四点と像はすべて有限であるので、§A5.14 定理 1.2により(A′,B′;C′,D′)=−1である。
x=B′D′>0とおく。像の順序と与えられた長さからA′D′=6+3+x=9+xであり、
−3(9+x)6x=−1となる。分母は正であるので、6x=3(9+x)、x=9を得る。
元の配置ではy=BD>0とおく。AC=4、CB=3からAD=4+3+y=7+yであり、元の複比の等式は
−3(7+y)4y=−1となる。分母は正であるので、4y=3(7+y)、y=21を得る。したがって、B′D′=9、BD=21である。▨
6 演習
- tを0,1と異なる実数とする。座標がA=0,B=1,C=tである三点に対して、CのA,Bに関する調和共役点が有限に存在する条件を求め、存在する場合の座標を求めよ。
- 4点の順序を2つ入れ替えたとき、複比がどの値へ変わるか確認せよ。
- ある幾何条件を有向比で記述し、複比不変性で簡単な配置へ送る方法を設計せよ。
解答.
CがABの中点となるのはt=1/2の場合である。§A5.15 定理 2.1により、項目 (1)の有限な調和共役点は、t=1/2のときただ一つ存在し、その座標は
d=2t−0−1t(0+1)−2⋅0⋅1=2t−1tである。t=1/2のとき、有限な調和共役点は存在しない。▨