§A5.21射影・複比の実戦

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射影幾何を競技問題へ使うときは、長さや角度を直接追うのではなく、射影変換で保たれる複比・調和性へ翻訳します。複比の定義と一般的な不変性は §A5.14 複比とその射影不変性 で確認できます。

1 調和四点

同一直線上の相異なる有限な四点A,B,C,DA,B,C,Dの座標をa,b,c,da,b,c,dとします。§A5.14 定義 1.1により、複比は次の式で表されます。

公式 1.1. 同一直線上の相異なる有限な四点A,B,C,DA,B,C,Dの座標をa,b,c,da,b,c,dとすると、

(A,B;C,D)=(c−a)(d−b)(c−b)(d−a)(A,B;C,D)=\frac{(c-a)(d-b)}{(c-b)(d-a)}

である。四点が相異なるので、分母は00でない。

この値が−1-1のとき、C,DC,DはA,BA,Bに関して調和共役です。複比の式は、符号つきの長さの比を用いると、

(A,B;C,D)=AC‾/CB‾AD‾/DB‾(A,B;C,D)=\frac{\overline{AC}/\overline{CB}}{\overline{AD}/\overline{DB}}

と書くこともできます。点の順序を変えると値が変わることがあるため、複比の記号では点の順序を指定します。

2 実戦の流れ

  1. 問題の4点・2本の割線を見つける。
  2. 有向比を複比へまとめる。
  3. 射影変換で計算しやすい配置へ送る。
  4. 不変な複比の等式だけを元の配置へ戻す。

射影で保たれる複比の等式を用いて、変換後の配置から元の配置の関係を導きます。射影は一般に長さを保たないので、像の座標値を元の点の座標値と同一視することはできません。

3 例:調和共役の座標計算

例 3.1. 同一直線上の三点の座標がA=0,B=1,C=2A=0,B=1,C=2であるとする。CCのA,BA,Bに関する調和共役点の座標をD=dD=dとすると、

(2−0)(d−1)(2−1)(d−0)=−1.\frac{(2-0)(d-1)}{(2-1)(d-0)}=-1.

となる。したがって2(d−1)=−d2(d-1)=-d、d=2/3d=2/3である。逆に、d=2/3d=2/3を代入すると複比は−1-1であり、四点は相異なるので、この点が調和共役点である。

3.1 実戦問題と解答

例 3.2. 直線上の相異なる有限な四点A,B,C,DA,B,C,Dが(A,B;C,D)=−1(A,B;C,D)=-1を満たすとする。射影変換によって三点A,B,CA,B,Cをそれぞれ座標0,1,20,1,2の点へ送ると、複比は変わらないので、DDの像の座標は2/32/3となる。元の配置へ戻す等式は(A,B;C,D)=−1(A,B;C,D)=-1であり、元のC,DC,DはA,BA,Bに関して調和共役である。像の座標2/32/3は、元のDDの座標を表すものではない。

4 有限射影と調和共役

問題 4.1. 相異なる二直線ℓ,m\ell,mと、どちらの直線上にもない点OOをとる。mm上にこの順に並ぶ相異なる点A′,B′,C′A',B',C'をとり、A′B′=B′C′A'B'=B'C'とする。線分A′B′A'B'をA′D′:D′B′=2:1A'D':D'B'=2:1に内分する点をD′D'とする。

直線OA′,OB′,OC′,OD′OA',OB',OC',OD'とℓ\ellとの交点がすべて有限であるとし、それぞれA,B,C,DA,B,C,Dとする。C,DC,DがA,BA,Bに関して調和共役であることを示せ。

解答.

直線mmの正の向きをA′A'からB′B'へとる。A′,B′,C′A',B',C'の順序と等間隔の条件から、A′C′‾/C′B′‾=−2\overline{A'C'}/\overline{C'B'}=-2である。D′D'の内分比から、A′D′‾/D′B′‾=2\overline{A'D'}/\overline{D'B'}=2である。したがって

(A′,B′;C′,D′)=−22=−1(A',B';C',D')=\frac{-2}{2}=-1

となる。A′,B′,C′,D′A',B',C',D'は相異なる。O∉mO\notin mであるから、四直線OA′,OB′,OC′,OD′OA',OB',OC',OD'は相異なる。O∉ℓO\notin\ellであるから、これらの直線とℓ\ellとの四つの交点A,B,C,DA,B,C,Dも相異なる。

二直線の外にあるOOを中心とする射影で、四点と像がすべて有限であるので、§A5.14 定理 1.2により、

(A,B;C,D)=(A′,B′;C′,D′)=−1(A,B;C,D)=(A',B';C',D')=-1

である。よってC,DC,DはA,BA,Bに関して調和共役である。▨

注意 4.2. この問題で、mm上のA′,B′A',B'の座標をそれぞれ0,10,1とすると、C′C'の座標は22、D′D'の座標は2/32/3となる。元のDDの座標が2/32/3になるとは限らない。

5 調和関係による長さの決定

問題 5.1. 非退化な三角形PABPABの辺PA,PBPA,PBの内部に、それぞれ点Q,RQ,Rをとる。直線AR,BQAR,BQの交点をTT、直線PTPTと辺ABABの交点をCCとする。直線QRQRは直線ABABと平行でなく、交点DDはBB側の延長上にあるとする。

直線ABABと相異なる直線mmと、どちらの直線上にもない点SSをとる。SSを中心としてA,B,C,DA,B,C,Dをmmへ射影し、像をそれぞれA′,B′,C′,D′A',B',C',D'とする。四つの像は相異なる有限点であり、mm上でA′,C′,B′,D′A',C',B',D'の順に並んでいるとする。A′C′=6A'C'=6、C′B′=3C'B'=3のとき、B′D′B'D'を求めよ。また、元の配置でAC=4AC=4、CB=3CB=3のとき、BDBDを求めよ。

解答.

RRは辺PBPBの内部にあるので、P,BP,Bは直線ARARに関して反対側にある。QQは線分PAPAの内部にあるので、直線ARARに関してPPと同じ側にある。したがって、線分BQBQは直線ARARと内部の点TTで交わる。線分BQBQの内部は三角形PABPABの内部にあるので、TTも三角形の内部にあり、線分ARARの内部にある。半直線PTPTは角APBAPBの内部を通るので、辺ABABの内部の点CCと交わる。

三角形PABPABの各辺の内部点Q,R,CQ,R,Cに§A5.9 定理 1.3を適用する。AR,BQ,PCAR,BQ,PCは点TTで交わるので、

AQQPPRRBBCCA=1\frac{AQ}{QP}\frac{PR}{RB}\frac{BC}{CA}=1

である。同じ三角形の横断線QRDQRDに§A5.9 定理 3.1を適用する。Q,RQ,Rは辺の内部にあり、DDはBB側の延長上にあるので、通常の正の長さで表すと、

AQQPPRRBBDDA=1\frac{AQ}{QP}\frac{PR}{RB}\frac{BD}{DA}=1

となる。すべての長さは正であり、二つの式を比較して

ACBC=ADBD\frac{AC}{BC}=\frac{AD}{BD}

を得る。直線ABABの正の向きをAAからBBへとる。CCはA,BA,Bの間にあり、DDはBB側の延長上にあるので、

(A,B;C,D)=−AC⋅BDBC⋅AD=−1(A,B;C,D)=-\frac{AC\cdot BD}{BC\cdot AD}=-1

である。SSは両直線の外にあり、四点と像はすべて有限であるので、§A5.14 定理 1.2により(A′,B′;C′,D′)=−1(A',B';C',D')=-1である。

x=B′D′>0x=B'D'>0とおく。像の順序と与えられた長さからA′D′=6+3+x=9+xA'D'=6+3+x=9+xであり、

−6x3(9+x)=−1-\frac{6x}{3(9+x)}=-1

となる。分母は正であるので、6x=3(9+x)6x=3(9+x)、x=9x=9を得る。

元の配置ではy=BD>0y=BD>0とおく。AC=4AC=4、CB=3CB=3からAD=4+3+y=7+yAD=4+3+y=7+yであり、元の複比の等式は

−4y3(7+y)=−1-\frac{4y}{3(7+y)}=-1

となる。分母は正であるので、4y=3(7+y)4y=3(7+y)、y=21y=21を得る。したがって、B′D′=9B'D'=9、BD=21BD=21である。▨

注意 5.2. 直線ABAB上でA,B,C,DA,B,C,Dの座標をそれぞれ0,7,4,280,7,4,28とし、直線mm上でA′,B′,C′,D′A',B',C',D'の座標をそれぞれ0,9,6,180,9,6,18とすると、どちらの複比も−1-1である。像の長さB′D′=9B'D'=9と元の長さBD=21BD=21は異なり、射影で保たれるのは複比の等式である。

6 演習

  1. ttを0,10,1と異なる実数とする。座標がA=0,B=1,C=tA=0,B=1,C=tである三点に対して、CCのA,BA,Bに関する調和共役点が有限に存在する条件を求め、存在する場合の座標を求めよ。
  2. 4点の順序を2つ入れ替えたとき、複比がどの値へ変わるか確認せよ。
  3. ある幾何条件を有向比で記述し、複比不変性で簡単な配置へ送る方法を設計せよ。
解答.

CCがABABの中点となるのはt=1/2t=1/2の場合である。§A5.15 定理 2.1により、項目 (1)の有限な調和共役点は、t≠1/2t\ne1/2のときただ一つ存在し、その座標は

d=t(0+1)−2⋅0⋅12t−0−1=t2t−1d=\frac{t(0+1)-2\cdot0\cdot1}{2t-0-1}=\frac{t}{2t-1}

である。t=1/2t=1/2のとき、有限な調和共役点は存在しない。▨

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