§E9.2有界線形作用素と作用素ノルム

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前の記事では、ノルム空間とその完備性を定め、数列空間や連続関数空間が Banach 空間になることを確かめた。空間が一つ与えられていれば、その中の点列が収束するかどうかはノルムだけで決まる。完備な空間では、点列が収束するかどうかを、点列が Cauchy 列であるかどうかによって判定することができる。しかし、二つのノルム空間の間の線形写像が収束列を収束列へ送るかどうかは、定義域と終域の完備性からも写像の線形性からも従わず、写像の側に新しい条件を課さない限り決まらない。

線形写像がノルムを一定の倍率以内に抑えるという条件を課すと、その倍率の下限が写像ごとに一つの数として定まる。この数を作用素ノルムという。作用素ノルムは、一つの写像の連続性を測る量である。同時に、作用素ノルムによって線形写像の全体に距離が入り、線形写像の全体は再びノルム空間になる。そのため、写像の空間の上でも収束を論じることができる。有界線形作用素を作用素ノルムとともに定義し、線形写像の全体が作る空間について解説する。

1 有界性と連続性

以下では、X,YX,Yを同じ係数体K∈{R,C}\mathbb K\in\{\mathbb R,\mathbb C\}上のノルム空間とする。

定義 1.1. 線形写像T:X→YT:X\to Yが有界線形作用素 (bounded linear operator) であるとは、ある定数M≥0M\geq0が存在し、任意のx∈Xx\in Xに対して

∥Tx∥Y≤M∥x∥X\|Tx\|_Y\leq M\|x\|_X

が成り立つことをいう。有界線形作用素全体をB(X,Y)B(X,Y)と書く。T∈B(X,Y)T\in B(X,Y)に対して

∥T∥:=sup⁡∥x∥X≤1∥Tx∥Y\|T\|:=\sup_{\|x\|_X\leq1}\|Tx\|_Y

を作用素ノルム (operator norm) という。

命題 1.2.X≠{0}X\neq\{0\}かつT∈B(X,Y)T\in B(X,Y)ならば

∥T∥=sup⁡∥x∥X=1∥Tx∥Y=sup⁡x≠0∥Tx∥Y∥x∥X\|T\| =\sup_{\|x\|_X=1}\|Tx\|_Y =\sup_{x\neq0}\frac{\|Tx\|_Y}{\|x\|_X}

が成り立つ。X={0}X=\{0\}ならばB(X,Y)={0}B(X,Y)=\{0\}であり、作用素ノルムは00である。いずれの場合も、任意のx∈Xx\in Xに対して∥Tx∥Y≤∥T∥∥x∥X\|Tx\|_Y\leq\|T\|\|x\|_Xである。

証明.X={0}X=\{0\}の場合には線形写像T:X→YT:X\to Yは零写像だけであり、作用素ノルムの定義から∥T∥=0\|T\|=0である。以下ではX≠{0}X\neq\{0\}とする。x≠0x\neq0に対してu=x/∥x∥Xu=x/\|x\|_Xとおくと∥u∥X=1\|u\|_X=1であり、線形性から

∥Tx∥Y∥x∥X=∥Tu∥Y\frac{\|Tx\|_Y}{\|x\|_X}=\|Tu\|_Y

である。単位球上の各x≠0x\neq0を同様に正規化すると

∥Tx∥Y=∥x∥X∥Tx∥x∥X∥Y≤sup⁡∥u∥X=1∥Tu∥Y\|Tx\|_Y=\|x\|_X\left\|T\frac{x}{\|x\|_X}\right\|_Y \leq\sup_{\|u\|_X=1}\|Tu\|_Y

となり、x=0x=0に対しても同じ評価が成り立つ。単位球面は単位球に含まれるので、三つの上限は一致する。この等式に任意のx≠0x\neq0を代入すると∥Tx∥Y≤∥T∥∥x∥X\|Tx\|_Y\leq\|T\|\|x\|_Xを得る。x=0x=0の場合も同じ不等式が成り立つ。▨

命題 1.3.B(X,Y)B(X,Y)上の作用素ノルムはノルムの三条件を満たす。

証明. 作用素ノルムは非負である。∥T∥=0\|T\|=0ならば、命題 1.2により任意のx∈Xx\in Xに対して∥Tx∥Y=0\|Tx\|_Y=0なのでT=0T=0である。T=0T=0ならば定義から∥T∥=0\|T\|=0である。λ∈K\lambda\in\mathbb Kに対して

∥λT∥=sup⁡∥x∥X≤1∥λTx∥Y=∣λ∣ ∥T∥\|\lambda T\| =\sup_{\|x\|_X\leq1}\|\lambda Tx\|_Y =|\lambda|\,\|T\|

である。さらに、任意のS,T∈B(X,Y)S,T\in B(X,Y)と∥x∥X≤1\|x\|_X\leq1に対して

∥(S+T)x∥Y≤∥Sx∥Y+∥Tx∥Y≤∥S∥+∥T∥\|(S+T)x\|_Y\leq\|Sx\|_Y+\|Tx\|_Y\leq\|S\|+\|T\|

なので、単位球上で上限をとると∥S+T∥≤∥S∥+∥T∥\|S+T\|\leq\|S\|+\|T\|を得る。▨

定理 1.4. 線形写像T:X→YT:X\to Yについて、次の三条件は同値である。

  1. TTは有界である。
  2. TTはXXのすべての点で連続である。
  3. TTは00で連続である。

証明.(1)⇒\Rightarrow(2)を示す。あるM≥0M\geq0が存在して

∥Tx−Ty∥Y=∥T(x−y)∥Y≤M∥x−y∥X\|Tx-Ty\|_Y=\|T(x-y)\|_Y\leq M\|x-y\|_X

が成り立つため、TTは Lipschitz 連続である。

(2)⇒\Rightarrow(3)を示す。全域で連続ならば、特に00で連続である。

(3)⇒\Rightarrow(1)を示す。TTが00で連続であるとする。00の像は00なので、あるδ>0\delta>0が存在し、∥z∥X<δ\|z\|_X<\deltaならば∥Tz∥Y<1\|Tz\|_Y<1となる。x≠0x\neq0に対してz=(δ/2)x/∥x∥Xz=(\delta/2)x/\|x\|_Xとおくと∥z∥X=δ/2<δ\|z\|_X=\delta/2<\deltaである。したがって

δ2∥x∥X∥Tx∥Y=∥Tz∥Y<1,\frac{\delta}{2\|x\|_X}\|Tx\|_Y=\|Tz\|_Y<1,

すなわち∥Tx∥Y≤(2/δ)∥x∥X\|Tx\|_Y\leq(2/\delta)\|x\|_Xである。x=0x=0の場合は両辺が00であるから、同じ評価が成り立つ。したがってTTは有界である。▨

2 作用素空間

B(X,Y)B(X,Y)は、点ごとの加法とスカラー倍によってベクトル空間になる。

定理 2.1.XXをノルム空間、YYを Banach 空間とする。このとき、B(X,Y)B(X,Y)は作用素ノルムについて Banach 空間である。XXが完備であることは仮定しない。

証明.(Tn)(T_n)をB(X,Y)B(X,Y)の Cauchy 列とする。固定したx∈Xx\in Xに対して

∥Tnx−Tmx∥Y≤∥Tn−Tm∥ ∥x∥X\|T_nx-T_mx\|_Y\leq\|T_n-T_m\|\,\|x\|_X

なので、(Tnx)(T_nx)はYYの Cauchy 列である。YYの完備性により極限が存在するため、

Tx:=lim⁡n→∞TnxTx:=\lim_{n\to\infty}T_nx

と定める。極限と有限和およびスカラー倍を交換すると、TTは線形である。

ε>0\varepsilon>0をとる。あるNNが存在し、m,n≥Nm,n\geq Nなら∥Tn−Tm∥<ε\|T_n-T_m\|<\varepsilonである。n≥Nn\geq Nとx∈Xx\in Xを固定し、m→∞m\to\inftyとすると

∥(Tn−T)x∥Y≤ε∥x∥X\|(T_n-T)x\|_Y\leq\varepsilon\|x\|_X

を得る。したがってTn−TT_n-Tは有界で∥Tn−T∥≤ε\|T_n-T\|\leq\varepsilonである。特にT=TN+(T−TN)T=T_N+(T-T_N)は有界であり、Tn→TT_n\to Tは作用素ノルムについて成り立つ。▨

Y=KY=\mathbb Kとすると、定理 2.1により、XXが完備でなくてもB(X,K)B(X,\mathbb K)は Banach 空間である。

命題 2.2.T∈B(X,Y)T\in B(X,Y)、S∈B(Y,Z)S\in B(Y,Z)ならばS∘T∈B(X,Z)S\circ T\in B(X,Z)であり、

∥S∘T∥≤∥S∥ ∥T∥\|S\circ T\|\leq\|S\|\,\|T\|

が成り立つ。

証明. 任意のx∈Xx\in Xに対して

∥S(Tx)∥Z≤∥S∥ ∥Tx∥Y≤∥S∥ ∥T∥ ∥x∥X\|S(Tx)\|_Z\leq\|S\|\,\|Tx\|_Y \leq\|S\|\,\|T\|\,\|x\|_X

である。命題 1.2によって結論が従う。▨

例 2.3.1≤p<∞1\leq p<\inftyとし、ℓp\ell^p上の右シフトRRと左シフトLLを

R(x1,x2,…)=(0,x1,x2,…),L(x1,x2,…)=(x2,x3,…)R(x_1,x_2,\ldots)=(0,x_1,x_2,\ldots),\qquad L(x_1,x_2,\ldots)=(x_2,x_3,\ldots)

で定める。直接計算すると

∥Rx∥pp=∑j=1∞∣xj∣p=∥x∥pp,\|Rx\|_p^p=\sum_{j=1}^{\infty}|x_j|^p=\|x\|_p^p,

なのでRRは等長作用素であり∥R∥=1\|R\|=1である。一方、∥Lx∥p≤∥x∥p\|Lx\|_p\leq\|x\|_pなので∥L∥≤1\|L\|\leq1である。標準基底に対してLej+1=ejLe_{j+1}=e_jであるため∥L∥≥1\|L\|\geq1であり、∥L∥=1\|L\|=1となる。Le1=0Le_1=0なので、LLは等長作用素ではない。作用素ノルムが11であることと、すべてのベクトルのノルムを保存することは異なる。

例 2.4.P[0,1]P[0,1]に一様ノルムを入れ、D:P[0,1]→P[0,1]D:P[0,1]\to P[0,1]をDf=f′Df=f'で定める。fn(x)=xnf_n(x)=x^nとすると∥fn∥∞=1\|f_n\|_\infty=1であるが、

∥Dfn∥∞=sup⁡0≤x≤1nxn−1=n\|Df_n\|_\infty=\sup_{0\leq x\leq1}nx^{n-1}=n

である。したがって、DDを有界にする定数は存在しない。定理 1.4により、DDは連続でない。

同じ空間上の積分作用素Vf(x)=∫0xf(t) dtVf(x)=\int_0^x f(t)\,dtについては∥Vf∥∞≤∥f∥∞\|Vf\|_\infty\leq\|f\|_\inftyである。微分と積分は代数的には互いに近い操作であるが、一様ノルムに関する有界性は異なる。

例 2.5.C[0,1]C[0,1]上の作用素

(Vf)(x):=∫0xf(t) dt(Vf)(x):=\int_0^x f(t)\,dt

を考える。任意のx∈[0,1]x\in[0,1]に対して

∣(Vf)(x)∣≤∫0x∣f(t)∣ dt≤x∥f∥∞≤∥f∥∞|(Vf)(x)|\leq\int_0^x|f(t)|\,dt \leq x\|f\|_\infty\leq\|f\|_\infty

なので∥V∥≤1\|V\|\leq1である。f≡1f\equiv1に対してVf(x)=xVf(x)=xであり、∥f∥∞=∥Vf∥∞=1\|f\|_\infty=\|Vf\|_\infty=1となるため、∥V∥=1\|V\|=1である。

3 演習

問題 3.1 (一点での連続性). 線形写像T:X→YT:X\to Yがある一点x0x_0で連続ならば、00で連続であることを証明し、定理 1.4を用いてTTが有界であることを示せ。

解答.

TTがx0x_0で連続であるとし、ε>0\varepsilon>0をとる。あるδ>0\delta>0が存在し、∥x−x0∥X<δ\|x-x_0\|_X<\deltaならば∥Tx−Tx0∥Y<ε\|Tx-Tx_0\|_Y<\varepsilonとなる。∥z∥X<δ\|z\|_X<\deltaを満たすz∈Xz\in Xに対してx=x0+zx=x_0+zとおくと∥x−x0∥X=∥z∥X<δ\|x-x_0\|_X=\|z\|_X<\deltaであり、TTの線形性によりT0=0T0=0とT(x0+z)−Tx0=TzT(x_0+z)-Tx_0=Tzが成り立つので

∥Tz−T0∥Y=∥Tz∥Y=∥T(x0+z)−Tx0∥Y<ε\|Tz-T0\|_Y=\|Tz\|_Y=\|T(x_0+z)-Tx_0\|_Y<\varepsilon

である。ε>0\varepsilon>0は任意であるから、TTは00で連続である。定理 1.4 (3)⇒\Rightarrow(1)により、TTは有界である。▨

問題 3.2 (終域が完備でない作用素空間).YYをノルム空間とする。写像Θ:B(K,Y)→Y\Theta:B(\mathbb K,Y)\to Y、Θ(T)=T1\Theta(T)=T1が等長な線形全単射であることを証明せよ。これを用いて、c00c_{00}に上限ノルムを入れたときB(K,c00)B(\mathbb K,c_{00})が完備でないことを示し、定理 2.1でYYの完備性の仮定を外すことができないことを確かめよ。また、B(c00,K)B(c_{00},\mathbb K)は完備であることを示せ。

解答.

Θ\Thetaは線形である。実際、(aS+bT)1=aS1+bT1(aS+bT)1=aS1+bT1である。T∈B(K,Y)T\in B(\mathbb K,Y)とα∈K\alpha\in\mathbb KについてTα=αT1T\alpha=\alpha T1であるから、∥Tα∥=∣α∣ ∥T1∥\|T\alpha\|=|\alpha|\,\|T1\|であり、命題 1.2により∥T∥=sup⁡∣α∣=1∥Tα∥=∥T1∥\|T\|=\sup_{|\alpha|=1}\|T\alpha\|=\|T1\|である。したがってΘ\Thetaは等長であり、とくに単射である。y∈Yy\in Yに対してTyα=αyT_y\alpha=\alpha yと定めると、TyT_yは線形で∥Tyα∥=∣α∣ ∥y∥\|T_y\alpha\|=|\alpha|\,\|y\|を満たすので有界であり、Θ(Ty)=y\Theta(T_y)=yである。ゆえにΘ\Thetaは全射である。

Y=c00Y=c_{00}とする。§E9.1 例 2.5の Cauchy 列(x(N))(x^{(N)})はc00c_{00}の中で収束しない。TN=Θ−1(x(N))T_N=\Theta^{-1}(x^{(N)})とおくと、Θ\Thetaが等長であるから∥TN−TM∥=∥x(N)−x(M)∥∞\|T_N-T_M\|=\|x^{(N)}-x^{(M)}\|_\inftyであり、(TN)(T_N)はB(K,c00)B(\mathbb K,c_{00})の Cauchy 列である。TN→TT_N\to TとなるT∈B(K,c00)T\in B(\mathbb K,c_{00})が存在すると仮定すると、∥x(N)−T1∥∞=∥TN−T∥→0\|x^{(N)}-T1\|_\infty=\|T_N-T\|\to0となり、(x(N))(x^{(N)})がc00c_{00}の元T1T1に収束することになって矛盾する。したがってB(K,c00)B(\mathbb K,c_{00})は完備でなく、定理 2.1の結論はYYが完備でない場合には成り立たないことがある。

一方、K\mathbb Kは Banach 空間であるから、定理 2.1をX=c00X=c_{00}、Y=KY=\mathbb Kに適用すると、c00c_{00}が完備でなくてもB(c00,K)B(c_{00},\mathbb K)は Banach 空間である。▨

問題 3.3 (シフト作用素の片側逆).R,LR,Lを例 2.3の作用素とする。LR=ILR=IであるがRL≠IRL\neq Iであることを計算し、RRの全射性とLLの単射性を判定せよ。

解答.

x=(x1,x2,…)∈ℓpx=(x_1,x_2,\ldots)\in\ell^pとする。定義から

LRx=L(0,x1,x2,…)=(x1,x2,…)=xLRx=L(0,x_1,x_2,\ldots)=(x_1,x_2,\ldots)=x

であるからLR=ILR=Iである。一方、

RLx=R(x2,x3,…)=(0,x2,x3,…)RLx=R(x_2,x_3,\ldots)=(0,x_2,x_3,\ldots)

であり、標準基底のe1=(1,0,0,…)e_1=(1,0,0,\ldots)に対してRLe1=0≠e1RLe_1=0\neq e_1である。したがってRL≠IRL\neq Iである。

RRは全射でない。実際、任意のx∈ℓpx\in\ell^pについてRxRxの第1成分は00であるから、第1成分が11であるe1e_1はRRの像に属さない。LLは単射でない。実際、e1≠0e_1\neq0かつLe1=0Le_1=0である。

LR=ILR=Iからは、RRの単射性とLLの全射性も従う。Rx=Rx′Rx=Rx'ならばx=LRx=LRx′=x′x=LRx=LRx'=x'であるから、RRは単射である。任意のx∈ℓpx\in\ell^pはx=L(Rx)x=L(Rx)と表されるから、LLは全射である。▨

問題 3.4 (Volterra 作用素のべき).VnV^nを Volterra 作用素のnn回合成とする。Vnf(x)=1(n−1)!∫0x(x−t)n−1f(t) dtV^nf(x)=\frac1{(n-1)!}\int_0^x(x-t)^{n-1}f(t)\,dtを帰納法で証明し、∥Vn∥=1/n!\|V^n\|=1/n!を示せ。

解答.

VVは例 2.5の作用素(Vf)(x)=∫0xf(t) dt(Vf)(x)=\int_0^xf(t)\,dtである。f∈C[0,1]f\in C[0,1]とn≥1n\geq1に対して、主張する式の右辺を

(Wnf)(x):=1(n−1)!∫0x(x−t)n−1f(t) dt(x∈[0,1])(W_nf)(x):=\frac1{(n-1)!}\int_0^x(x-t)^{n-1}f(t)\,dt\qquad(x\in[0,1])

と書く。VnV^nとWnW_nはともに線形であり、実数値関数を実数値関数へ送る。複素数値のffを実部uuと虚部vvに分けるとVnf=Vnu+iVnvV^nf=V^nu+iV^nvとWnf=Wnu+iWnvW_nf=W_nu+iW_nvが成り立つので、実数値のffについてVnf=WnfV^nf=W_nfが成り立てば、複素数値のffについても成り立つ。以下、Vnf=WnfV^nf=W_nfの証明ではffを実数値とする。

n=1n=1のとき、(x−t)0=1(x-t)^0=1であるからW1f=VfW_1f=Vfである。n≥1n\geq1についてVnf=WnfV^nf=W_nfが成り立つとする。k=0,1,…,nk=0,1,\ldots,nに対してFk(x)=∫0xtkf(t) dtF_k(x)=\int_0^xt^kf(t)\,dtとおく。二項定理により(x−t)n=∑k=0n(nk)(−1)kxn−ktk(x-t)^n=\sum_{k=0}^n\binom nk(-1)^kx^{n-k}t^kであるから

(Wn+1f)(x)=1n!∑k=0n(nk)(−1)kxn−kFk(x)(W_{n+1}f)(x)=\frac1{n!}\sum_{k=0}^n\binom nk(-1)^kx^{n-k}F_k(x)

である。§D1.19 定理 1.1により、各FkF_kは(0,1)(0,1)上で微分可能でFk′(x)=xkf(x)F_k'(x)=x^kf(x)を満たし、端点でも片側微分可能であるから[0,1][0,1]上で連続である。積の微分法により、(0,1)(0,1)上で

(Wn+1f)′(x)=1n!∑k=0n−1(nk)(−1)k(n−k)xn−k−1Fk(x)+xnf(x)n!∑k=0n(nk)(−1)k\begin{aligned} (W_{n+1}f)'(x) &=\frac1{n!}\sum_{k=0}^{n-1}\binom nk(-1)^k(n-k)x^{n-k-1}F_k(x)\\ &\quad+\frac{x^nf(x)}{n!}\sum_{k=0}^n\binom nk(-1)^k \end{aligned}

である。n≥1n\geq1であるから、第2項の和は(1−1)n=0(1-1)^n=0である。0≤k≤n−10\leq k\leq n-1に対して(nk)(n−k)=n(n−1k)\binom nk(n-k)=n\binom{n-1}kであるから、

(Wn+1f)′(x)=1(n−1)!∑k=0n−1(n−1k)(−1)kxn−1−kFk(x)=1(n−1)!∫0x(x−t)n−1f(t) dt=(Wnf)(x)(W_{n+1}f)'(x) =\frac1{(n-1)!}\sum_{k=0}^{n-1}\binom{n-1}k(-1)^kx^{n-1-k}F_k(x) =\frac1{(n-1)!}\int_0^x(x-t)^{n-1}f(t)\,dt =(W_nf)(x)

を得る。右辺の積分への書き換えは、(x−t)n−1(x-t)^{n-1}の二項展開と積分の線形性による。

Wn+1fW_{n+1}fは[0,1][0,1]上で連続であり、(Wn+1f)(0)=0(W_{n+1}f)(0)=0である。帰納法の仮定によりWnf=VnfW_nf=V^nfは連続関数である。x∈(0,1]x\in(0,1]とすると、Wn+1fW_{n+1}fは[0,x][0,x]上で連続であり、(0,x)(0,x)上で微分可能で導関数はWnfW_nfであるから、§D1.19 定理 2.1により

(Vn+1f)(x)=∫0x(Vnf)(s) ds=∫0x(Wnf)(s) ds=(Wn+1f)(x)−(Wn+1f)(0)=(Wn+1f)(x)(V^{n+1}f)(x)=\int_0^x(V^nf)(s)\,ds=\int_0^x(W_nf)(s)\,ds=(W_{n+1}f)(x)-(W_{n+1}f)(0)=(W_{n+1}f)(x)

である。x=0x=0では両辺が00である。したがってVn+1f=Wn+1fV^{n+1}f=W_{n+1}fであり、帰納法により、すべてのn≥1n\geq1についてVnf=WnfV^nf=W_nfが成り立つ。

x∈(0,1]x\in(0,1]に対して、§D1.19 定理 2.1を原始関数t↦−(x−t)n/nt\mapsto-(x-t)^n/nに適用すると∫0x(x−t)n−1 dt=xn/n\int_0^x(x-t)^{n-1}\,dt=x^n/nであり、この等式はx=0x=0でも成り立つ。0≤t≤x0\leq t\leq xでは(x−t)n−1≥0(x-t)^{n-1}\geq0であるから、任意のf∈C[0,1]f\in C[0,1]とx∈[0,1]x\in[0,1]に対して

∣(Vnf)(x)∣≤1(n−1)!∫0x(x−t)n−1∣f(t)∣ dt≤∥f∥∞(n−1)!⋅xnn≤∥f∥∞n!|(V^nf)(x)| \leq\frac1{(n-1)!}\int_0^x(x-t)^{n-1}|f(t)|\,dt \leq\frac{\|f\|_\infty}{(n-1)!}\cdot\frac{x^n}n \leq\frac{\|f\|_\infty}{n!}

である。したがって∥Vnf∥∞≤∥f∥∞/n!\|V^nf\|_\infty\leq\|f\|_\infty/n!であり、∥Vn∥≤1/n!\|V^n\|\leq1/n!である。f≡1f\equiv1とすると∥f∥∞=1\|f\|_\infty=1であり、同じ積分の計算により(Vnf)(x)=xn/n!(V^nf)(x)=x^n/n!であるから、∥Vnf∥∞=1/n!\|V^nf\|_\infty=1/n!である。したがって∥Vn∥≥1/n!\|V^n\|\geq1/n!であり、∥Vn∥=1/n!\|V^n\|=1/n!が成り立つ。▨

参考文献

  1. John B. Conway, A Course in Functional Analysis, 2nd ed., Graduate Texts in Mathematics, Springer, New York, 1990.有界線形作用素と作用素空間の完備性を参考にした。
  2. Walter Rudin, Functional Analysis, 2nd ed., International Series in Pure and Applied Mathematics, McGraw Hill, 1991.連続線形写像と作用素ノルムを参考にした。
  3. Erwin Kreyszig, Introductory Functional Analysis with Applications, Wiley, 1978.シフト作用素と積分作用素の例を参考にした。

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