1 指示関数の連続近似
補題 1.1.Xを局所コンパクト Hausdorff 空間、μを Radon 測度とする。A∈B(X)、μ(A)<∞、1≤p<∞とする。任意のε>0に対してϕ∈Cc(X,R)が存在して
0≤ϕ≤1,∥1A−ϕ∥Lp(μ)<εを満たす。
証明.η>0を2η<εpとなるように取る。内正則性により、コンパクト集合K⊆Aでμ(A∖K)<ηを満たすものが存在する。§E9.30 補題 1.2によりKを含むコンパクトな閉包をもつ開集合Vを取り、§E9.30 命題 3.2によりK⊆U⊆V、μ(U∖K)<ηを満たす開集合Uを取る。K上で1、台がUに含まれる切断関数ϕを取ると、
∣1A−ϕ∣p≤1A∖K+1U∖K.したがって∥1A−ϕ∥pp<2η<εpである。▨
定理 1.2.Xを局所コンパクト Hausdorff 空間、μを Radon 測度、F∈{R,C}とし、1≤p<∞とする。Cc(X,F)の関数の類はLp(μ;F)で稠密である。可算選択公理のもとで、同じ結論はμの完備化に関するLp空間でも成り立つ。
証明.f∈Lp(μ;F)とε>0を取る。§E9.22 定理 2.2により、Lpに属する単関数sで∥f−s∥p<ε/2を満たすものを取る。§E9.22 補題 2.3により
s=j=1∑mcj1Aj,μ(Aj)<∞と表示される。s=0ならば連続近似として0を取る。s=0ならば、補題 1.1を各Ajに適用し、∑j∣cj∣∥1Aj−ϕj∥p<ε/2となる切断関数を取る。g=∑jcjϕjはCc(X,F)に属する。Minkowski の不等式§E9.21 定理 6.1により
∥f−g∥p≤∥f−s∥p+j∑∣cj∣∥1Aj−ϕj∥p<ε.完備化に関する可測代表元には、§E9.10 命題 4.2により Borel 可測代表元を取ることができる。§E9.10 命題 4.3により、その代表元のLpノルムと連続関数からの距離は元の測度で計算した値に一致する。したがって完備化の場合にも同じ近似が成立する。▨
例 1.3. 非可算集合Dに離散位相と数え上げ測度を入れる。この測度は Radon 測度であり、シグマ有限ではない。Cc(D,F)は有限集合に台をもつ関数全体であるから、1≤p<∞ではℓp(D;F)で稠密である。一方、Cc(D,F)はℓ∞(D;F)で稠密ではない。
証明. 離散空間のコンパクト集合は有限集合である。任意の集合の数え上げ測度は、その有限部分集合の濃度の上限であるから、Radon 測度の条件が成り立つ。有限測度集合は有限集合であり、非可算集合Dを可算個の有限集合で覆うことはできない。有限なpにおける稠密性は定理 1.2による。定数関数1はℓ∞(D)に属するが、有限集合に台をもつ任意のgに対して、台の外で∣1−g∣=1である。したがって∥1−g∥∞≥1である。▨
2 正汎関数の表現
証明.f∈C0(X,F)とε>0を取る。K={∣f∣≥ε}はコンパクトである。fはK上で有界であり、その外では∣f∣<εであるから、有界である。§E9.30 補題 1.2により0≤χ≤1、χ∣K=1を満たすχ∈Cc(X,R)を取る。fχ∈Cc(X,F)であり、∥f−fχ∥∞≤εである。▨
命題 2.2.Xを局所コンパクト Hausdorff 空間とする。正で連続な実線形汎関数L:C0(X,R)→Rに対して、有限 Radon 測度μが一意に存在して
L(f)=∫Xfdμ(f∈C0(X,R))を満たす。また、∥L∥=μ(X)である。
証明.LのCc(X,R)への制限に§E9.31 定理 2.1を適用し、表現する Radon 測度μを取る。§E9.30 命題 4.1の開集合の公式から
μ(X)=ϕ∈Cc(X,R)0≤ϕ≤1supL(ϕ)≤∥L∥.したがってμは有限である。f∈C0(X,R)とε>0を取る。命題 2.1によりg∈Cc(X,R)で∥f−g∥∞<εを満たすものを取ると、
L(f)−∫Xfdμ≤(∥L∥+μ(X))ε.ε↓0とすれば表現公式を得る。有限測度に関する評価∣∫fdμ∣≤μ(X)∥f∥∞は∥L∥≤μ(X)を与える。Cc上の一意性§E9.30 系 4.2により、表現する有限 Radon 測度は一意である。▨
補題 2.3.Xを局所コンパクト Hausdorff 空間、L:C0(X,R)→Rを連続実線形汎関数とする。f∈C0(X,R)、f≥0に対して
P(f)=sup{L(g):g∈C0(X,R), 0≤g≤f}と定める。この関数は、正で連続な実線形汎関数L+に一意に拡張される。L−=L+−Lも正で連続であり、L=L+−L−である。
証明.0≤P(f)≤∥L∥∥f∥∞である。正のスカラーによる同次性は、上限に現れる関数を同じスカラーで掛けることによる。P(0)=0であるから、零スカラーの場合も成り立つ。
f1,f2≥0とし、0≤g≤f1+f2を取る。
g1=min(g,f1),g2=g−g1はC0(X,R)に属し、0≤gj≤fjとg=g1+g2を満たす。したがってL(g)≤P(f1)+P(f2)である。逆に、0≤gj≤fjならばg1+g2はP(f1+f2)の上限に現れる。二つのgjについて独立に上限を取ると、P(f1+f2)=P(f1)+P(f2)である。
f=u−v、u,v≥0に対してL+(f)=P(u)−P(v)と定める。別の表示f=r−sにはu+s=r+vが成り立ち、加法性からP(u)+P(s)=P(r)+P(v)である。したがって定義は表示によらず、実線形である。任意のf∈C0は正部分と負部分の差であるため、この拡張は一意である。正値性と上の評価から
∣L+(f)∣≤L+(∣f∣)=P(∣f∣)≤∥L∥∥f∥∞.ゆえにL+は連続である。f≥0に対してg=fを上限の候補に取ればP(f)≥L(f)であるから、L−は正である。二つの連続汎関数の差としてL−は連続である。▨
3 有限複素 Radon 測度
定義 3.1.Xを局所コンパクト Hausdorff 空間とする。B(X)上の複素測度νの全変動∣ν∣が有限 Radon 測度であるとき、νを 有限複素 Radon 測度 (finite complex Radon measure) という。
補題 3.2.Xを局所コンパクト Hausdorff 空間、θを有限 Radon 測度とする。正 Borel 測度αがすべての Borel 集合Aでα(A)≤θ(A)を満たすならば、αは有限 Radon 測度である。有限個の有限 Radon 測度の和も有限 Radon 測度である。
証明.A∈B(X)とε>0を取る。コンパクト集合K⊆Aでθ(A∖K)<εを満たすものを取ると、α(A∖K)<εである。したがってαはコンパクト内正則であり、α(X)≤θ(X)<∞である。有限和については、各測度に対するAのコンパクトな内側近似の有限和を取れば、和の測度に対する内側近似を得る。▨
命題 3.3.Xを局所コンパクト Hausdorff 空間、νを有限複素 Radon 測度とする。
Tν(f)=∫Xfdν(f∈C0(X,C))は連続複素線形汎関数であり、∥Tν∥=∣ν∣(X)である。
証明. 全変動による積分評価§E9.26 命題 3.2により
∣Tν(f)∣≤∫X∣f∣d∣ν∣≤∣ν∣(X)∥f∥∞.複素積分の線形性からTνは複素線形である。§E9.26 定理 2.4の密度kを取り、∣k∣=1である零集合上ではk=1に変更する。u=kは Borel 可測で∣u∣=1であり、∫Xudν=∣ν∣(X)である。
定理 1.2を∣ν∣、p=1に適用し、任意のε>0に対して∥g−u∥L1(∣ν∣)<εを満たすg∈Cc(X,C)を取る。
q=max(1,∣g∣)gはCc(X,C)に属し、∥q∥∞≤1である。∣u∣≤1により∣q−g∣=(∣g∣−1)+≤∣g−u∣であるから、∥q−u∥1<2εである。積分評価から
∣Tν(q)−∣ν∣(X)∣<2ε.ゆえに∥Tν∥≥∣ν∣(X)−2εである。ε↓0とし、最初の上側評価と合わせてノルムの等式を得る。▨
定理 3.4.Xを局所コンパクト Hausdorff 空間とする。任意の連続複素線形汎関数T:C0(X,C)→Cに対して、有限複素 Radon 測度νが一意に存在して
T(f)=∫Xfdν(f∈C0(X,C))を満たす。写像ν↦Tνは複素線形な等長全単射であり、∥T∥=∣ν∣(X)である。
証明. 実関数に対するTの実部と虚部を
A(h)=ReT(h),B(h)=ImT(h)(h∈C0(X,R))と書く。A,Bは連続実線形汎関数である。補題 2.3により、それぞれを二つの正汎関数の差A=A+−A−、B=B+−B−に分解する。命題 2.2により、四つの正汎関数を有限 Radon 測度μ1,μ2,μ3,μ4で表現する。
ν=μ1−μ2+iμ3−iμ4と定める。全変動の定義から∣ν∣≤θ=μ1+μ2+μ3+μ4である。§E9.26 定理 2.3と補題 3.2により、∣ν∣は有限 Radon 測度である。
実 Borel 単関数sに対して、極形式と積分の線形性から
∫Xsdν=∫Xsdμ1−∫Xsdμ2+i∫Xsdμ3−i∫Xsdμ4である。任意のh∈C0(X,R)は有界であり、値域の有限分割によって Borel 単関数で一様に近似することができる。∣ν∣≤θと四つの測度の有限性による積分評価により、一様近似の誤差を0へ近づければ∫Xhdν=A(h)+iB(h)=T(h)を得る。任意のf∈C0(X,C)を実部と虚部に分け、複素線形性を用いると表現公式が従う。
別の表現測度ν′との差の全変動は∣ν∣+∣ν′∣以下であるから、同じ支配の補題により差も有限複素 Radon 測度である。命題 3.3により
∣ν−ν′∣(X)=∥Tν−Tν′∥=0であり、ν=ν′である。線形結合の表現測度の全変動も有限 Radon 測度に支配されるため、有限複素 Radon 測度全体は複素線形空間をなす。積分の線形性とノルムの等式により、対応は複素線形な等長全単射である。▨