1 積分による汎関数
定義 1.1.(X,Σ,μ)を正測度空間、K∈{R,C}とし、p,q∈[1,∞]が1/p+1/q=1を満たすとする。1/∞=0と定める。積分双対写像 (integral duality map)
Tq:Lq(μ;K)⟶Lp(μ;K)∗,Tq(g)(f)=∫Xfgdμを定める。実数体ではg=gとする。双対空間は連続なK-線形汎関数の空間である。Tqは実数体では線形、複素数体では共役線形であり、§E9.21 定理 4.2により∥Tq(g)∥≤∥g∥qである。
補題 1.2. 任意の正測度空間(X,Σ,μ)と1≤p<∞に対し、f∈Lp(μ)の有限値可測代表元の非零集合はシグマ有限な可測部分集合である。
証明.Gn={∣f∣>1/n}とおく。μ(Gn)≤np∫∣f∣pdμ<∞であり、{f=0}=⋃nGnである。▨
命題 1.3. 正測度空間(X,Σ,μ)上の写像T∞:L∞(μ)→L1(μ)∗が単射であるための必要十分条件は、μが半有限であることである。半有限な場合、T∞は等長である。
証明.μが半有限であるとする。g∈L∞と0<t<∥g∥∞を取る。{∣g∣>t}は正測度であるから、半有限性により有限な正測度の可測部分集合Eを含む。f=μ(E)−11Eg/∣g∣は∥f∥1=1を満たし、T∞(g)(f)=μ(E)−1∫E∣g∣dμ>tである。t↑∥g∥∞とすると∥T∞(g)∥≥∥g∥∞であり、逆向きはHölder不等式による。∥g∥∞=0の場合の等号も成り立つ。
μが半有限でないとする。可測集合Aでμ(A)=∞かつ
c=sup{μ(B):B∈Σ, B⊆A, μ(B)<∞}<∞となるものを取る。有限部分集合列の和B⊆Aをμ(B)=cとなるように取ることができる。c=0の場合にはB=∅とする。D=A∖Bは無限測度である。有限測度可測集合E⊆Dについて、B∪Eの測度は有限でありc以下であるから、μ(E)=0である。補題 1.2により、任意のf∈L1はD上でほとんど至る所零である。したがってT∞(1D)=0であるが、1DのL∞類は零でない。単射性は成り立たない。▨
2 有限部分における密度
補題 2.1.(X,Σ,μ)を正測度空間、1≤p<∞とし、Φ∈Lp(μ;K)∗とμ(E)<∞を満たすE∈Σを取る。E上の可測集合に対して
νE(A)=Φ(1A)(A⊆E)と定めると、νEは有限符号付き測度または複素測度であり、νE≪μ∣Eである。その全変動は
∣νE∣(A)≤∥Φ∥μ(A)1/p(A⊆E)を満たす。
証明. 互いに素な可測集合列(An)の和をA⊆Eとする。1A−∑n≤N1AnのLpノルムのp乗はμ(⋃n>NAn)であり、μ(E)<∞により零へ収束する。Φの連続性によりνEは可算加法的である。零集合の指示関数は零類であるため絶対連続性も従う。
有限可測分割A=⨆j=1mAjに対し、∣cj∣≤1とcjνE(Aj)=∣νE(Aj)∣を満たすスカラーを取る。すると
j∑∣νE(Aj)∣=Φ(j∑cj1Aj)≤∥Φ∥μ(A)1/p.左辺は非負実数である。分割の上限を取れば全変動評価を得る。▨
補題 2.2. 正測度空間(X,Σ,μ)とΦ∈L1(μ;K)∗に対し、各有限測度可測集合E上にgE∈L∞(μ∣E;K)が存在し、∥gE∥∞≤∥Φ∥および
Φ(f)=∫EfgEdμがEに台をもつすべてのf∈L1に対して成り立つ。すべての有限測度可測集合E,Fについて、gE=gFがE∩F上でほとんど至る所成り立つ。
証明.補題 2.1と§E9.26 定理 4.1により、νE=hEμ∣Eと表す。実数体ではhEは実数値である。全変動評価と§E9.26 補題 2.2により、任意の可測集合A⊆Eについて∫A∣hE∣dμ≤∥Φ∥μ(A)である。A={∣hE∣>∥Φ∥+1/n}とすれば各Aは零集合であり、∣hE∣≤∥Φ∥がほとんど至る所で成り立つ。gE=hEとする。指示関数に対する表示から線形性により単関数の表示が従い、§E9.22 定理 2.2とHölder不等式によりすべてのL1関数へ延長される。E∩F上の可測集合の指示関数に対する値は同じであるから、§E9.26 定理 4.1の一意性により密度は整合する。▨
3 L1双対と局所化可能性
定理 3.1. 正測度空間(X,Σ,μ)上でT∞:L∞(μ;K)→L1(μ;K)∗が全単射であるための必要十分条件は、μが局所化可能であることである。この場合、T∞は等長である。
証明.μが局所化可能であるとする。Φ∈L1(μ)∗に対し、補題 2.2の局所密度gEを、すべての有限測度可測集合Eにわたって取る。§E9.27 定理 3.2と§E9.27 系 3.3により、それらを可測関数gへ貼り合わせる。{∣g∣>∥Φ∥}は任意の有限部分との交わりが零集合であるから、§E9.27 補題 2.3により零集合である。したがってg∈L∞である。L1に属する単関数の非零台は有限測度であるため、局所表示からΦ(s)=T∞(g)(s)が従う。単関数の稠密性によりΦ=T∞(g)である。単射性と等長性は命題 1.3による。
T∞が全単射であるとする。命題 1.3によりμは半有限である。任意の可測集合族(Ai)i∈Iを取り、非負なf∈L1に対して
P(f)=J⊆I, J 有限sup∫∪i∈JAifdμと定める。有限集合Jは包含に関して有向であり、f,v≥0に対して、両方の積分を同時に近似する有限集合は二つの有限集合の和として取ることができる。したがってP(f+v)=P(f)+P(v)である。非負スカラーについて斉次性も成り立ち、0≤P(f)≤∥f∥1である。
実数値関数に対してP(f+)−P(f−)と定める。非負錐上の加法性により、f=u−vという別の非負分解を使っても、u+f−=v+f+への加法性から値は変わらない。この延長は実線形である。複素数体では実部と虚部へ適用して複素線形汎関数Φを得る。任意のfについて∣Φ(f)∣=Φ(Re(cf))≤P(∣f∣)≤∥f∥1を満たす単位スカラーcを取ることができるため、Φは連続である。
全射性によってΦ(f)=∫fhdμとなるh∈L∞を取る。有限測度集合の指示関数について0≤Φ(1E)≤μ(E)である。虚部の正負、および実部が0より小さい集合と1より大きい集合の有限部分でこの不等式を用い、半有限性を適用すると、hは実数値で0≤h≤1がほとんど至る所成り立つ。零集合上を修正して、この不等式を点ごとに満たすようにする。
有限測度可測集合E⊆Aiでは、Jにiを含めることによりΦ(1E)=μ(E)である。よってh=1が各Ai上でほとんど至る所成り立つ。一方、すべてのAiを本質的に含む可測集合Bがあれば、E⊆X∖B、μ(E)<∞に対して各有限和との交わりは零集合なのでΦ(1E)=0である。半有限性によりh=0がX∖B上でほとんど至る所成り立つ。したがってH={h=1}は(Ai)の本質的上限である。任意の族に本質的上限が存在するため、測度代数はDedekind完備であり、μは局所化可能である。▨
4 1<p<∞の双対
補題 4.1.(X,Σ,μ)をシグマ有限な正測度空間とし、1<p<∞、q=p/(p−1)とする。任意のΦ∈Lp(μ;K)∗に対し、一意なg∈Lq(μ;K)が存在してΦ=Tq(g)となり、∥g∥q=∥Φ∥である。
証明.En↑X、μ(En)<∞となる可測集合列を取る。補題 2.1と§E9.26 定理 4.1によりΦ(1A)=∫AgndμがすべてのA⊆Enで成り立つ可積分密度gnを取る。密度の一意性によりgn+1=gnがEn上でほとんど至る所成り立つ。例外零集合の可算和を除き、En∖En−1上でg=gnと定めれば、有限値可測関数gを得る。
各n,k∈N≥1についてD=En∩{∣g∣≤k}とし、f=1Dg∣g∣q−2を取る。g=0ではf=0と定める。En上でfは有界であるため、単関数で一様に近似して指示関数の表示をfへ延長することができる。K=∫D∣g∣qdμとおくと
K=Φ(f)≤∥Φ∥K1/p.K>0ならばK1/q≤∥Φ∥であり、K=0でも同じ不等式が成り立つ。n,k→∞として単調収束定理を用いれば、g∈Lqと∥g∥q≤∥Φ∥を得る。
有限測度可測集合Aについて、1A∩En→1AがLpで成り立つので、Hölder不等式によりΦ(1A)=Tq(g)(1A)である。Lp単関数の稠密性からΦ=Tq(g)が従う。g=0ならばf=g∣g∣q−2/∥g∥qq−1はLpノルム1をもち、Tq(g)(f)=∥g∥qである。g=0の場合も含め、Hölder不等式と合わせてノルムは一致する。二つの密度の差へ同じ関数を適用すれば一意性も従う。▨
定理 4.2.(X,Σ,μ)を任意の正測度空間、1<p<∞、q=p/(p−1)とする。このときTq:Lq(μ;K)→Lp(μ;K)∗は等長な全単射である。
証明.Φ∈Lp(μ)∗とし、C=∥Φ∥とおく。∥fn∥p≤1と∣Φ(fn)∣→Cを満たす列を取る。補題 1.2により、代表元の非零集合の和F=⋃n{fn=0}はシグマ有限である。F上の関数を零延長して得る制限汎関数ΦFのノルムはCである。補題 4.1により密度gF∈Lq(μ∣F)を取り、X∖F上で零とした関数をgとする。
任意のf∈Lpの非零集合をGとし、H=F∪Gとする。Hはシグマ有限であり、ΦHのノルムもCである。対応する密度gHは、Fへの制限について一意性からgH∣F=gFを満たす。したがって
∫H∣gH∣qdμ=Cq=∫F∣gF∣qdμであり、gH=0がH∖F上でほとんど至る所成り立つ。fはHに台をもつため、Φ(f)=∫HfgHdμ=∫Xfgdμである。C=0の場合も同じ構成は零密度を与える。ノルムの一致と単射性は、任意のLq密度に対する関数g∣g∣q−2の計算による。▨
5 局所条件によるRadon–Nikodym表現
定理 5.1.(X,Σ,μ)を局所化可能な正測度空間、νを(X,Σ)上の正測度とする。ν≪μを仮定し、各E∈Σ、μ(E)<∞についてν∣Eがシグマ有限であると仮定する。さらに、すべてのA∈Σに対して
ν(A)=E∈Σ, μ(E)<∞supν(A∩E)を仮定する。このとき、非負有限値可測関数gが存在してν(A)=∫AgdμがすべてのA∈Σで成り立つ。gはμに関するほとんど至る所の一致を除いて一意である。
証明. 各有限測度可測集合E上で§E9.14 定理 2.3によりν∣E=gEμ∣Eと表す。§E9.14 定理 3.1により、gEは有限値に修正することができ、任意のE,F上の密度はE∩Fでほとんど至る所一致する。§E9.27 定理 3.2により、すべてのgEを非負有限値可測関数gに貼り合わせる。§E9.27 補題 2.3を1Agに適用すると
∫Agdμ=μ(E)<∞sup∫A∩Egdμ=μ(E)<∞supν(A∩E)=ν(A)である。二つの密度が同じνを与えるならば、各有限部分でRadon–Nikodym密度の一意性が成り立ち、半有限性により全体でもほとんど至る所一致する。▨
例 5.2.X=[0,1]のBorel集合族上で、μを数え上げ測度、νをLebesgue測度とする。μの零集合は空集合だけなのでν≪μである。しかしν=gμとなる非負密度があれば、各x∈Xについてg(x)=ν({x})=0であり、ν(X)=0となってν(X)=1に矛盾する。有限なμ-測度集合は有限集合であり、すべてν-零集合なので、有限部分による値の決定条件が成立していない。
例 5.3. 非可算集合Xの冪集合上で、μを数え上げ測度とし、ν(A)=0を可算なAに、ν(A)=∞を非可算なAに与える。μは局所化可能であり、ν≪μである。各有限なEではν∣Eは零測度なのでシグマ有限であるが、ν(X)=∞はsupμ(E)<∞ν(E)=0と異なる。各一点集合上の等式が密度を零に強制するため、密度表現は存在しない。局所的なシグマ有限性だけでは全体の値を決定しない。
6 演習
問題 6.1. 非可算集合I上の数え上げ測度に対し、1<p<∞とする。Lpの各元が高々可算な台をもつことを使い、任意の連続線形汎関数がLqの一意な元によって表されることを説明せよ。L1の場合と条件を比較せよ。
解答.
f∈Lpの各集合{∣f∣>1/n}は有限であるため、非零台は可算である。ノルムを近似する可算列の台の和も可算であり、その部分上で補題 4.1を適用した密度を零延長する。別の可算台を加えても密度のノルムは増えないため、追加部分の密度は零となる。定理 4.2の証明と同じ帰着が成り立つ。L1では双対密度は有界関数であり、台が可算である必要はない。数え上げ測度は局所化可能なので、定理 3.1によりL∞全体がL1双対を与える。▨