1 完備化の内正則性
命題 1.1. 可算選択公理を仮定する。Xを局所コンパクト Hausdorff 空間、μを Radon 測度とする。B(X)のμによる完備化をBμ、完備化された測度をμと書く。このとき、任意のA∈Bμに対して
μ(A)=K⊆AK はコンパクトsupμ(K)である。
証明.§E9.8 命題 7.8により、Borel 集合B,Nでμ(N)=0、A△B⊆N、μ(A)=μ(B)を満たすものを取る。コンパクト集合L⊆Bとε>0を取る。§E9.30 補題 1.2により、Lを含むコンパクトな閉包をもつ開集合Vが存在する。N∩LはVに含まれる Borel 零集合である。§E9.30 命題 3.2により、N∩L⊆U⊆V、μ(U)<εを満たす開集合Uが存在する。
K=L∖Uはコンパクトであり、B∖N⊆AであるからK⊆Aである。μ(L)<∞より
μ(K)≥μ(L)−ε.εを0へ近づけ、Bに含まれるコンパクト集合Lの上限を取ると、主張の右辺はμ(B)=μ(A)以上である。逆向きは完備化された測度の単調性による。▨
2 有限測度部分による局所化
定義 2.1. 可算選択公理を仮定する。Xを局所コンパクト Hausdorff 空間、μを Radon 測度とし、μをその完備化とする。有限測度の完備可測集合全体を
Ef={E∈Bμ:μ(E)<∞}と書き、
Σloc={A⊆X: A∩E∈Bμ for every E∈Ef},μloc(A)=E∈Efsupμ(A∩E)と定める。μlocをμの完備化の 局所化 (localization of the completed Radon measure) という。
定理 2.2. 可算選択公理を仮定する。Xを局所コンパクト Hausdorff 空間、μを Radon 測度とする。上で定めたΣlocとμlocは次の性質をもつ。
- Σlocはシグマ加法族であり、μlocはその上の正測度である。Bμ⊆Σlocであり、Bμ上でμloc=μである。
- E∈EfとA⊆Eに対して、A∈ΣlocであることとA∈Bμであることは同値である。
- μlocは完備であり、半有限かつ局所的に決定される。
- 任意のA∈Σlocに対して
μloc(A)=K⊆AK はコンパクトsupμ(K)
である。特に、μlocはコンパクト集合上で有限である。
証明. 各E∈Efとの交わりが完備可測であるという条件は、補集合と可算和で保存される。したがってΣlocはシグマ加法族であり、Bμを含む。互いに交わらないAn∈Σlocに対して
μloc(n⋃An)=E∈Efsupn∑μ(An∩E)≤n∑μloc(An).m∈N≥1とE1,…,Em∈Efを取ると、E=⋃n=1mEnもEfに属し、左辺は∑n=1mμ(An∩En)以上である。各Enとmについて上限を取れば逆の不等式を得る。空集合の測度は0であるから、μlocは測度である。命題 1.1により、μは半有限である。ゆえにA∈Bμに対して、有限部分との交わりの測度の上限はμ(A)である。
A∈Σloc、A⊆E∈Efならば、定義によりA=A∩E∈Bμである。逆向きは、完備可測集合族がΣlocに含まれることによる。
N∈Σloc、μloc(N)=0とA⊆Nを取る。各E∈Efに対してA∩Eは完備可測な零集合N∩Eの部分集合であるから、完備可測で測度が0である。したがってA∈Σloc、μloc(A)=0である。任意のA∈Σlocについて、A∩Eは有限測度の完備可測集合であり、それらの測度の上限がμloc(A)である。ゆえに半有限性が成り立つ。
A⊆Xがすべての有限測度のΣloc可測集合との交わりをΣloc可測にすると仮定する。各E∈Efはそのような集合であるから、A∩E∈Σlocである。(2)によりA∩E∈Bμである。定義からA∈Σlocとなるため、局所的決定性が成り立つ。
命題 1.1により、各μ(A∩E)はA∩Eに含まれるコンパクト集合の測度の上限である。したがってμloc(A)はAに含まれるすべてのコンパクト集合の測度の上限以下である。逆向きは測度の単調性による。コンパクト集合は Borel 集合であり、局所化はその測度を変えないから、コンパクト集合上で有限である。▨
系 2.3. 可算選択公理を仮定する。Xを局所コンパクト Hausdorff 空間、μを有限 Radon 測度とする。このときΣloc=Bμである。
証明.X∈Efであるから、定理 2.2 (2)でE=Xとする。▨
3 自己支持集合
補題 3.1.Xを局所コンパクト Hausdorff 空間とする。ΣがB(X)を含み、mがΣ上の正測度であって、すべてのΣ可測集合でコンパクト内正則であるとする。空でない上向き有向な開集合族GとE∈Σに対して
m(E∩G∈G⋃G)=G∈Gsupm(E∩G)が成り立つ。上向き有向とは、任意のG1,G2∈GがあるG3∈Gに含まれることである。
証明. コンパクト集合K⊆E∩⋃Gは有限個のGの元で覆われる。有向性により、その有限個の開集合をすべて含むG∈Gが存在する。したがってm(K)≤m(E∩G)である。コンパクト内正則性によってKの上限を取ると、一方の不等式が従う。逆向きは測度の単調性による。▨
定義 3.2.Xを位相空間、ΣをB(X)を含むシグマ加法族、mをΣ上の正測度とする。集合F∈Σが 自己支持 (self-supporting set) であるとは、任意の開集合G⊆Xについて
G∩F=∅⟹m(G∩F)>0となることをいう。
補題 3.3. 可算選択公理を仮定する。Xを局所コンパクト Hausdorff 空間、μを Radon 測度とし、m=μlocとする。E∈Σlocが0<m(E)<∞を満たすならば、自己支持集合F⊆Eが存在してm(E∖F)=0を満たす。
証明.G={G⊆X:G は開集合, m(E∩G)=0}とおく。空集合がGに属し、Gは有限和で閉じている。定理 2.2 (4)と補題 3.1により、O=⋃Gに対してm(E∩O)=0である。F=E∖Oとおく。
開集合HがFと交わるならば、H∈Gではない。したがってm(E∩H)>0である。E∖Fは零集合であるからm(F∩H)=m(E∩H)>0である。ゆえにFは自己支持であり、m(E∖F)=0である。▨
補題 3.4. 可算選択公理を仮定する。Xを局所コンパクト Hausdorff 空間、μを Radon 測度とし、m=μlocとする。有限測度のE∈Σlocに対して、有限測度の開集合列(Gn)n∈N≥1が存在して
m(E∖n⋃Gn)=0を満たす。さらにm(E)>0ならば、有限測度の開集合Gでm(E∩G)>0を満たすものが存在する。
証明.定理 2.2 (4)により、コンパクト集合Kn⊆Eでm(E∖Kn)<2−nを満たすものを取る。§E9.30 補題 1.2により、各Knを含むコンパクトな閉包をもつ開集合Gnが存在する。m(Gn)<∞であり、残余の測度はすべての2−n以下であるから0である。m(E)>0の場合には、m(E∩Gn)=0がすべてのnで成り立つと、可算劣加法性によりm(E)=0となる。したがってあるGnが正の交わりをもつ。▨
4 厳密局所化可能性
定理 4.1. 選択公理を仮定する。Xを局所コンパクト Hausdorff 空間、μを Radon 測度とする。完備化の局所化μlocは厳密局所化可能である。すなわち、Σloc可測な分解
X=N⊔i∈I⨆Fi,μloc(N)=0,0<μloc(Fi)<∞が存在し、各Fiは自己支持である。任意のA⊆Xについて、A∈Σlocであるための必要十分条件は、すべてのi∈IでA∩Fi∈Σlocとなることである。可測なAに対して
μloc(A)=i∈I∑μloc(A∩Fi)である。右辺は有限部分和の上限を意味する。
証明.m=μlocとおく。正の有限測度をもつ自己支持集合の、互いに交わらない族全体を包含関係で順序付ける。空の族がこの順序集合に属する。任意の鎖の和は再び互いに交わらない族であり、鎖の上界である。Zorn の補題§E1.20 定理 2.1 (3)により極大な族(Fi)i∈Iが存在する。
主張 4.1.1. 任意のE∈Σloc、m(E)>0に対して、あるi∈Iがm(E∩Fi)>0を満たす。
証明. すべてのiでm(E∩Fi)=0と仮定する。半有限性により、Eをその正の有限測度部分に替える。補題 3.4により、有限測度の開集合Gでm(E∩G)>0となるものを取る。
JG={i:G∩Fi=∅}とおく。自己支持性により各i∈JGでm(G∩Fi)>0である。交わりは互いに交わらず、m(G)<∞である。任意のk∈N≥1についてm(G∩Fi)≥1/kを満たす添字は有限個であるから、JGは高々可算である。したがって
E′=E∩G∖i∈JG⋃Fiは可測であり、仮定と可算加法性からm(E′)=m(E∩G)>0である。補題 3.3により、E′は正の有限測度をもつ自己支持部分集合F′を含む。F′はJGの各Fiと交わらず、Gと交わらない残りのFiとも交わらない。ゆえにF′を極大族に加えることができ、極大性に反する。▨
N=X∖⋃iFiとおく。有限測度の開集合Gに対して、前の証明と同じ正測度の評価によりJGは高々可算である。したがって
N∩G=G∖i∈JG⋃Fiは可測である。正測度をもつならば主張 4.1.1に反するため、m(N∩G)=0である。
任意の有限測度のE∈Σlocを取る。補題 3.4の開集合列Gnにより、N∩Eは、可測な零集合の可算和⋃n(N∩E∩Gn)と、可測な零集合E∖⋃nGnの部分集合の和である。完備性からN∩Eは可測な零集合である。局所的決定性によりNは可測であり、半有限性によりm(N)=0である。
A⊆Xがすべてのiに対してA∩Fi∈Σlocを満たすとする。有限測度の開集合G上では
A∩G=(A∩N∩G)∪i∈JG⋃(A∩Fi∩G)である。第一項は可測な零集合の部分集合、第二項は可測集合の可算和であるから、A∩Gは可測である。任意の有限測度のE∈Σlocに同じ可算開被覆を用いると、A∩Eも可測である。局所的決定性からAは可測である。逆向きはシグマ加法族が交わりで閉じていることによる。
可測なAと有限測度のEに対して、Eの可算開被覆が交わるFiの全体は高々可算である。残るEの部分は零集合に含まれるから、可算加法性により
m(A∩E)≤i∈I∑m(A∩Fi).半有限性によってEの上限を取るとm(A)は右辺以下である。逆に、任意の有限集合J⊆Iに対してm(A)≥∑i∈Jm(A∩Fi)である。Jの上限を取れば測度の公式が従う。完備性によりA∩Nは任意のAについて可測であるから、この分解は§E9.27 定義 2.1 (5)の条件を満たす。▨