1 閉集合と開集合による近似
定理 1.1.(X,d)を距離空間、μをB(X)上の有限正測度とする。任意のA∈B(X)とε>0に対して、閉集合Fと開集合Uが存在して
F⊆A⊆U,μ(U∖F)<εを満たす。特に、
μ(A)=F⊆AF は閉集合supμ(F)=A⊆UU は開集合infμ(U)である。
証明. 閉集合F=∅に対してUn={x∈X∣d(x,F)<1/n}とおく。∣d(x,F)−d(y,F)∣≤d(x,y)であるからUnは開集合であり、Un↓Fである。μ(X)<∞と§E9.8 定理 4.1 (2)からμ(Un∖F)→0である。F=∅の場合にはU=∅を取る。
任意のε>0に対して主張の近似を持つ Borel 集合全体をDとする。前段により閉集合はDに属する。F⊆A⊆UならばX∖U⊆X∖A⊆X∖Fであり、二つの近似集合の差はU∖Fである。したがってDは補集合で閉じている。
An∈Dとε>0を取り、各n∈N≥1について
Fn⊆An⊆Un,μ(Un∖Fn)<ε2−n−2を満たす閉集合Fnと開集合Unを取る。A=⋃nAn、U=⋃nUnとおくと、μ(U∖A)<ε/4である。§E9.8 定理 4.1 (1)と有限性から、μ(A∖⋃n=1NAn)<ε/4となるNが存在する。閉集合F=⋃n=1NFnはAに含まれ、
μ(A∖F)<4ε+n=1∑Nε2−n−2<2εを満たす。ゆえにμ(U∖F)<εであり、A∈Dである。Dは閉集合をすべて含む σ-代数であるから、D=B(X)である。上限と下限の等式は、この近似と測度の単調性から従う。▨
2 緊密性
定義 2.1. 位相空間X上の有限正 Borel 測度μが 緊密 (tight measure) であるとは、任意のε>0に対してコンパクトな Borel 集合K⊆Xが存在し、μ(X∖K)<εを満たすことをいう。
補題 2.2.(X,d)を完備距離空間とする。各n∈N≥1に対して、Unを半径2−nの開球の有限合併とする。このとき
K=n=1⋂∞Unはコンパクトである。
証明.Kは閉集合であるから、§E2.5 定理 3.2により完備である。ε>0に対して21−n<εとなるnを取る。Unを構成する有限個の球の中心をa1,…,amとすると、
K⊆Un⊆j=1⋃m{x∈X∣d(x,aj)≤2−n}である。各閉球がKと交わる場合だけ、交点bj∈Kを一つ取る。三角不等式により、その閉球内のKの点はすべてBd(bj,ε)に属する。よってKは全有界であり、§E2.9 系 3.3によりコンパクトである。K=∅の場合にもコンパクト性は成り立つ。▨
定理 2.3. Polish 空間X上の有限正 Borel 測度μは緊密である。
証明.X=∅ならばK=∅を取る。X=∅とし、位相を定める完備距離dと可算な稠密集合{aj∣j∈N≥1}を取る。ε>0を固定する。各n∈N≥1について、球Bd(aj,2−n)はXを覆う。§E9.8 定理 4.1 (1)とμ(X)<∞により、あるmn∈N≥1が存在し、
Un=j=1⋃mnBd(aj,2−n),μ(X∖Un)<ε2−nを満たす。補題 2.2によりK=⋂nUnはコンパクトである。測度の可算劣加法性から
μ(X∖K)≤n=1∑∞μ(X∖Un)≤n=1∑∞μ(X∖Un)<εである。Kは閉集合として構成したので Borel 集合であり、μは緊密である。▨
3 コンパクト集合による内側からの近似
系 3.1.Xを Polish 空間、μを有限正 Borel 測度とする。任意のA∈B(X)に対して
μ(A)=K⊆AK はコンパクトsupμ(K)である。
証明.ε>0を取る。定理 1.1から、F⊆Aとμ(A∖F)<ε/2を満たす閉集合Fを取る。定理 2.3から、μ(X∖L)<ε/2を満たすコンパクト集合Lを取る。K=F∩Lはコンパクトであり、K⊆Aと
μ(A∖K)≤μ(A∖F)+μ(X∖L)<εを満たす。測度の単調性と合わせて等式が従う。▨
例 3.2.R上の数え上げ測度μは正 Borel 測度であり、μ({0})=1である。しかし0を含む開集合は無限個の点を含むため、すべて測度が無限大である。したがって
μ({0})=0∈UU は開集合infμ(U)である。Polish 空間上の正 Borel 測度であるという条件だけでは、定理 1.1の結論は成り立たない。