1 連続関数の積分汎関数
補題 1.1.X,Yを局所コンパクト Hausdorff 空間、μ,νをそれぞれの Radon 測度とする。f∈Cc(X×Y,R)に対して
Ff(x)=∫Yf(x,y)dν(y),Hf(y)=∫Xf(x,y)dμ(x)はそれぞれCc(X,R)とCc(Y,R)に属する。また、
∫XFfdμ=∫YHfdνである。
証明.K=prX(suppf)とM=prY(suppf)はコンパクトである。いずれかが空ならばf=0であり、主張が成り立つ。各切片はMまたはKに台をもち、その集合の測度は有限であるから、切片積分は有限である。
x0∈Xとε>0を取る。各y0∈Mに対して、x0の開近傍Uy0とy0の開近傍Wy0を、x∈Uy0、y∈Wy0ならば
∣f(x,y)−f(x0,y0)∣<ε/2,∣f(x0,y)−f(x0,y0)∣<ε/2となるように取る。Mのコンパクト性によって有限個のWy0でMを覆い、対応するUy0の交わりをUとする。x∈Uならば
y∈Msup∣f(x,y)−f(x0,y)∣<ε,∣Ff(x)−Ff(x0)∣≤εν(M).したがってFfは連続である。Kの外でFf=0であり、Kは閉集合であるからsuppFf⊆Kである。座標を交換すればHf∈Cc(Y,R)も従う。
Kを含むコンパクトな閉包をもつ開集合O⊆Xを取る。上の一様な評価により、各xj∈Kの開近傍Uj⊆Oを
y∈Msup∣f(x,y)−f(xj,y)∣<ε(x∈Uj)となるように取ることができる。有限個のUjでKを覆い、§E9.30 補題 1.3により非負のϕj∈Cc(X,R)を取る。その台はUjに含まれ、∑jϕj=1がK上で成り立ち、全空間で∑jϕj≤1である。
t(x,y)=j∑ϕj(x)f(xj,y)はCc(X×Y,R)に属する。実際、各因子はコンパクトな台をもち、その台の積は§E2.19 系 5.4によりコンパクトである。fがK×Mの外で零であることから
f−t=j∑ϕj(x)(f(x,y)−f(xj,y))であり、∣f−t∣≤εである。両関数の台はO×Mに含まれる。有限和tの二つの積分順序は、各項について積分の線形性から一致する。それぞれの順序でfとtの積分の差はεμ(O)ν(M)以下である。したがって二つの順序で得たfの積分の差は2εμ(O)ν(M)以下であり、ε↓0とすれば等式を得る。▨
定理 1.2.X,Yを局所コンパクト Hausdorff 空間、μ,νをそれぞれの Radon 測度とする。積位相に関する全 Borel 集合族B(X×Y)上に Radon 測度ρが一意に存在して、任意のf∈Cc(X×Y,R)に対して
∫X×Yfdρ=∫X(∫Yf(x,y)dν(y))dμ(x)=∫Y(∫Xf(x,y)dμ(x))dν(y)を満たす。同じ公式はf∈Cc(X×Y,C)にも成り立つ。
証明. 積空間X×Yは Hausdorff である。各点の二つの座標にコンパクトな閉包をもつ開近傍を取ると、その積は開近傍であり、閉包は二つのコンパクト集合の積に含まれる。§E2.19 系 5.4により、この閉包はコンパクトである。したがって積空間は局所コンパクトである。
補題 1.1により
Λ(f)=∫XFfdμは有限な値をもつ正実線形汎関数Cc(X×Y,R)→Rである。§E9.31 定理 2.1により、これを表現する Radon 測度ρが一意に存在する。積分順序の等式は前の補題による。複素関数については実部と虚部に適用して等式を得る。▨
定義 1.3.定理 1.2の測度ρをμとνの Radon 積測度 (Radon product measure) という。以下ではρはこの測度を表す。
注意 1.4. 座標射影は連続であるから
B(X)⊗B(Y)⊆B(X×Y)である。左辺は Borel 長方形で生成されるシグマ加法族であり、右辺は積位相のすべての開集合で生成されるシグマ加法族である。Radon 積測度の定義域は右辺である。
2 非負下半連続関数
補題 2.1.Zを局所コンパクト Hausdorff 空間、mを Radon 測度とする。Hを、Z上の非負拡張実数値の下半連続関数からなる空でない上向き有向族とし、h(z)=supg∈Hg(z)とする。このときhは下半連続であり、
∫Zhdm=g∈Hsup∫Zgdmである。上向き有向とは、任意のg1,g2∈Hに対してg1,g2≤g3となるg3∈Hが存在することである。
証明. 任意の実数aに対して{h>a}=⋃g∈H{g>a}は開集合であるから、hは下半連続である。s=∑j=1raj1Aj≤hを非負 Borel 単関数とする。零係数の項を除いてaj>0とし、Ajは互いに交わらないとする。コンパクト集合Kj⊆Ajと0<η<1を取る。
各Kjは開集合{g>(1−η)aj}、g∈Hで覆われる。有限部分被覆と有向性により、あるg∈HがすべてのKj上でg>(1−η)ajを満たす。したがって
g∈Hsup∫Zgdm≥(1−η)j=1∑rajm(Kj).内正則性によって各Kjの上限を取ると、右辺の上限は(1−η)∫Zsdmである。η↓0とし、さらにs≤hの上限を取れば、左辺は∫Zhdm以上である。逆向きは積分の単調性による。▨
補題 2.2.Zを局所コンパクト Hausdorff 空間、mを Radon 測度とする。非負拡張実数値の下半連続関数fに対して
Hf={h∈Cc(Z,R):0≤h≤f}は空でない上向き有向族であり、点ごとにf=supHfである。また、
∫Zfdm=h∈Hfsup∫Zhdmである。
証明. 零関数はHfに属し、二つの関数の最大値もHfに属する。z∈Zと0<a<f(z)を取る。a<b<f(z)を満たす有限実数bを取り、開集合{f>b}の内部で、z上で1となる非負の切断関数χ∈Cc(Z,R)を取る。h=bχはf以下であり、h(z)>aである。f(z)=0の場合にはすべての小関数がその点で零であるから、点ごとの上限は常にfである。積分公式は補題 2.1による。▨
定理 2.3.X,Yを局所コンパクト Hausdorff 空間、μ,νをそれぞれの Radon 測度、ρを Radon 積測度とする。f:X×Y→[0,∞]が下半連続ならば、
x⟼∫Yf(x,y)dν(y),y⟼∫Xf(x,y)dμ(x)は非負拡張実数値の下半連続関数であり、
∫X×Yfdρ=∫X(∫Yf(x,y)dν(y))dμ(x)=∫Y(∫Xf(x,y)dμ(x))dν(y)である。
証明.補題 2.2の族Hfを取る。各x∈Xに対して、h(x,⋅)、h∈Hfは非負のCc(Y,R)関数の有向族であり、その点ごとの上限はf(x,⋅)である。補題 2.1により
J(x)=∫Yf(x,y)dν(y)=h∈HfsupFh(x).各Fhは非負連続関数であるから、Jは下半連続である。この有向族に同じ補題をX上で適用し、連続関数の表現公式を用いると
∫XJdμ=h∈Hfsup∫XFhdμ=h∈Hfsup∫X×Yhdρ=∫X×Yfdρ.最後の等式は積空間上の補題 2.2による。座標を交換すれば、もう一つの反復積分にも同じ結論を得る。▨
3 長方形と有限部分
補題 3.1.Zを局所コンパクト Hausdorff 空間とする。二つの Radon 測度がすべての開集合で同じ値をもつならば、すべての Borel 集合で同じ値をもつ。
証明. コンパクト集合K⊆Zを、コンパクトな閉包をもつ開集合Vに含める。§E9.30 命題 3.2により、各測度のKにおける値は、K⊆U⊆Vを満たす開集合Uの値の下限である。したがって二つの測度はコンパクト集合上で一致する。全 Borel 集合のコンパクト内正則性から、Borel 集合上でも一致する。▨
命題 3.2.X,Yを局所コンパクト Hausdorff 空間、μ,νをそれぞれの Radon 測度、ρを Radon 積測度とする。任意のA∈B(X)とB∈B(Y)に対して
ρ(A×B)=μ(A)ν(B)である。積には0⋅∞=∞⋅0=0の規約を用いる。
証明. 開集合U⊆XとW⊆Yに対して、1U×Wは下半連続である。定理 2.3によりρ(U×W)=μ(U)ν(W)である。
Wを有限測度の開集合とし、ζW(A)=ρ(A×W)と定める。これはB(X)上の測度である。任意のコンパクト集合K⊆Xは有限測度の開集合Vに含まれ、ζW(K)≤ρ(V×W)<∞である。コンパクト集合C⊆A×Wの射影K=prX(C)はAに含まれるコンパクト集合であり、ρ(C)≤ζW(K)である。ρの内正則性からζWはコンパクト内正則である。したがってζWは Radon 測度であり、開集合上でν(W)μに一致する。補題 3.1により
ρ(A×W)=μ(A)ν(W)(A∈B(X))である。
Aを有限測度の Borel 集合とし、θA(B)=ρ(A×B)と定める。コンパクトな射影による同じ議論がコンパクト内正則性を与える。コンパクト集合L⊆Yを有限測度の開集合Wに含めると、θA(L)≤μ(A)ν(W)<∞である。ゆえにθAは Radon 測度である。
任意の開集合W⊆Yに対し、Wに含まれるコンパクトな閉包をもつ開集合の族は、有限和について閉じており、Wを覆う。§E9.33 補題 3.1をρ、可測集合A×Y、開集合族X×W′に適用すると
θA(W)=W′supρ(A×W′)=μ(A)W′supν(W′)=μ(A)ν(W).最後の等式はνに同じ開集合の連続性を適用したものである。したがって補題 3.1により、有限なμ(A)の場合の長方形公式が成り立つ。
一般のA,Bに対して、コンパクト集合C⊆A×Bの射影K=prX(C)はμ(K)<∞を満たす。したがって
ρ(C)≤ρ(K×B)=μ(K)ν(B)≤μ(A)ν(B).Cの上限を取れば一方の不等式が従う。逆に、コンパクト集合K⊆Aに対してρ(A×B)≥μ(K)ν(B)である。μの内正則性からKの上限を取ると、逆向きの不等式を得る。ν(B)=0の場合にはすべての項が零であり、ν(B)=∞の場合にはμ(A)>0ならば正測度のコンパクト集合Kを取ることができるため、同じ結論となる。▨
定理 3.3. 可算選択公理を仮定する。X,Yを局所コンパクト Hausdorff 空間、μ,νをそれぞれの Radon 測度、ρを Radon 積測度とする。Borel 測度空間の完備で局所的に決定する積§E9.29 定義 2.2を(D,λ)とする。ρの完備化をρ、その局所化をρloc、局所化の定義域をΣρ,locとする。
- 有限測度 Borel 長方形R=E×F上で、ρのB(E)⊗B(F)への制限は有限積測度に一致する。有限積測度の完備化の定義域CRは、ρのR上の定義域に含まれ、測度の値は一致する。
- D⊆Σρ,locであり、D上でρloc=λである。特に、B(X)⊗B(Y)上でρ=λである。
証明. Radon 測度はコンパクト内正則でありコンパクト集合上で有限であるから、両因子は半有限である。したがってλは定義される。
有限測度 Borel 長方形R=E×F上のρの制限は有限であり、各 Borel 長方形に有限積測度と同じ値を与える。§E9.15 定理 5.1の一意性により、積シグマ加法族上で一致する。有限積測度の可測な零集合はρに関しても零集合であるから、その部分集合を追加した完備化はρの制限に含まれ、値も一致する。
A∈Dとする。有限測度の開長方形R=V×Wに対して、A∩R∈CRであるから、前の一致によりA∩Rはρ可測である。
任意の有限測度のρ可測集合Hを取る。完備化の内正則性§E9.33 命題 1.1により、コンパクト集合Kn⊆Hをρ(H∖Kn)<2−nとなるように取る。Knの二つのコンパクトな射影を、コンパクトな閉包をもつ開集合Vn,Wnに含める。Rn=Vn×Wnは有限測度の開長方形であり、H∖⋃nRnはρ可測な零集合である。したがってA∩Hは、可測集合A∩H∩Rnの可算和と、その零集合の部分集合の和であり、ρ可測である。局所化の定義によりA∈Σρ,locである。
上の被覆を有限和Sn=⋃j≤nRjに替えると、Snは有限測度の開長方形Tn=(⋃j≤nVj)×(⋃j≤nWj)に含まれる。測度の下からの連続性により
ρ(A∩H)=nlimρ(A∩H∩Sn)≤R は有限測度の開長方形supλR(A∩R).Hの上限を取れば、ρloc(A)はこの上限以下である。逆向きは各R自身が有限測度のρ可測集合であることから従う。
任意の有限測度 Borel 長方形E×Fとε>0を取る。両因子の内正則性からコンパクト集合K⊆E、L⊆Fを
μ(E∖K)ν(F)+μ(E)ν(F∖L)<εとなるように取ることができる。有限積測度に関して(E×F)∖(K×L)の測度はε未満である。K,Lを含む有限測度の開集合V,Wを取ると、局所積の整合性§E9.29 補題 2.1により
λE×F(A∩(E×F))≤λV×W(A∩(V×W))+ε.したがって全有限測度 Borel 長方形の上限と、有限測度の開長方形の上限は一致する。λの定義からρloc(A)=λ(A)となる。積シグマ加法族の集合はDとB(X×Y)の両方に属し、局所化はρの値を変えないから、最後の結論も従う。▨
4 可算個の有限長方形に支持される関数
定理 4.1. 可算選択公理を仮定する。X,Yを局所コンパクト Hausdorff 空間、μ,νをそれぞれの Radon 測度、ρを Radon 積測度とする。fはB(X)⊗B(Y)に関して可測であるとする。有限測度の Borel 長方形列(En×Fn)が存在して、点ごとに
{(x,y):f(x,y)=0}⊆n∈N≥1⋃(En×Fn)であると仮定する。
- fが非負拡張実数値ならば、両反復積分の内側の積分は Borel 可測関数を定め、
∫X×Yfdρ=∫X∫Yf(x,y)dν(y)dμ(x)=∫Y∫Xf(x,y)dμ(x)dν(y)
が成り立つ。
- fが有限実数値または有限複素数値であり、∫∣f∣dρ<∞ならば、両因子の Borel 零集合の外で切片は可積分である。例外零集合上で内側の積分を零と定めれば、両反復積分は可積分であり、同じ積分の等式が成り立つ。
証明.定理 3.3 (2)により、積シグマ加法族に関する非負可測関数のρ積分とλ積分は、単関数の積分の定義から一致する。したがって非負の場合には§E9.29 定理 3.1 (1)を適用する。実数値または複素数値の場合には、∣f∣の積分も二つの測度で一致するから、§E9.29 定理 3.1 (2)を適用する。両因子の測度空間は Borel 集合族を定義域としているため、内側の積分の可測性と例外零集合の可測性は Borel 可測性である。▨
5 可積分な対角集合の指示関数
例 5.1. 従属選択公理を仮定する。X=[0,1]に通常の位相と Borel Lebesgue 測度μを入れ、Y=[0,1]に離散位相と数え上げ測度νを入れる。両測度は Radon 測度である。対角集合
D={(x,y)∈X×Y:x=y}は閉集合であり、積シグマ加法族にも属する。Radon 積測度ρに対してρ(D)=0であるが、
∫X∫Y1D(x,y)dν(y)dμ(x)=1,∫Y∫X1D(x,y)dμ(x)dν(y)=0である。したがってρに関して可積分であることだけでは、積分交換は成立しない。
証明. Lebesgue 測度の内正則性§E9.16 定理 8.1とμ(X)=1により、μは Radon 測度である。離散空間のコンパクト集合は有限集合であり、任意の集合の濃度は有限部分集合の濃度の上限であるから、νも Radon 測度である。
Dの補集合は、各y∈Yに対する開集合(X∖{y})×{y}の和である。したがってDは閉集合である。[0,1]を長さ2−n以下の有限個の Borel 区間In,kに分割すると
D=n⋂k⋃(In,k×In,k)であるから、Dは積シグマ加法族にも属する。
コンパクト集合C⊆DのYへの射影は有限集合である。対角集合ではY座標が各点を一意に定めるため、Cも有限集合である。各一点集合には長方形公式からμ({x})ν({x})=0が与えられる。ゆえにρ(C)=0であり、コンパクト内正則性からρ(D)=0である。
各x∈Xに対して1D(x,⋅)の数え上げ積分は1であり、各y∈Yに対して1D(⋅,y)の Lebesgue 積分は0である。したがって二つの反復積分はそれぞれ1と0である。1Dは閉集合の指示関数として上半連続であるが、下半連続ではない。また、有限なν(Fn)をもつFnは有限集合であるから、可算個の有限測度長方形のYへの射影は高々可算である。Dの射影は非可算なY全体なので、点ごとの非零集合に対する可算有限長方形の支持条件も成り立たない。▨