1 平滑化核と平均
補題 1.1. 従属選択公理を仮定し、d≥1を整数とする。任意のr>0に対して、次の条件を満たすηr∈Cc∞(Rd;R)が存在する。
ηr≥0,suppηr=B(0,r),ηr(−x)=ηr(x),∫Rdηrdλd=1.
証明. 一変数関数θ:R→Rを
θ(t)={e−1/t,0,t>0,t≤0と定める。t>0では、帰納法により、各mに対してある多項式Pmが存在して
θ(m)(t)=Pm(1/t)e−1/t(1.1.1) と書くことができる。実際、式 (1.1.1)の右辺を微分すると、再び1/tの多項式とe−1/tの積になる。また、任意の非負整数Nに対して、指数関数の冪級数から
es≥(N+1)!sN+1(s>0)であるため、
0≤sNe−s≤s(N+1)!⟶0(s→∞)(1.1.2) である。式 (1.1.1)の多項式の各項へ式 (1.1.2)を適用すると、limt↓0θ(m)(t)=0を得る。t<0ではθとすべての導関数が0である。ここで、θ(m−1)(0)=0まで構成済みであるとする。t>0に対する
tθ(m−1)(t)−θ(m−1)(0)=t−1Pm−1(1/t)e−1/tは式 (1.1.2)によりt↓0で0へ収束し、t<0に対する差商は0である。したがって、θ(m)(0)は存在して0に等しい。この議論をm=1から帰納的に繰り返すと、θはR上でC∞級であり、すべての階数の導関数が0で連結する。
固定したr>0に対して
qr(x)=θ(r2−∣x∣2)とおく。θの滑らかさと多項式写像x↦r2−∣x∣2の滑らかさからqr∈C∞(Rd)である。qrはB(0,r)上で正であり、その外で0であるから、
suppqr=B(0,r).さらに、0≤qr≤1であり、台は[−r,r]dに含まれるため、
∫Rdqrdλd<∞.半開立方体
Q=(−2dr,2dr]dでは∣x∣≤r/2であるから、
qr(x)≥θ(3r2/4)>0.§E9.16 定義 1.1によるQの測度は(r/d)d>0である。したがって、
0<θ(3r2/4)λd(Q)≤∫Rdqrdλd<∞.正の定数
cr=(∫Rdqrdλd)−1を定め、ηr=crqrとおく。ηrは非負で滑らかであり、台はB(0,r)である。qrが∣x∣だけに依存することからηrは偶関数であり、定数crの定義から積分は1である。▨
補題 1.2. 従属選択公理を仮定し、d≥1を整数、K∈{R,C}とする。φ∈Cc(Rd;K)とし、r>0とする。補題 1.1のηrを用いて
(Mrφ)(x)=∫Rdφ(z)ηr(x−z)dλd(z)(1.2.1) と定める。このときMrφ∈Cc∞(Rd;K)である。さらに、
であり、任意の1≤p<∞に対して
∥Mrφ−φ∥p⟶0(r↓0)(1.2.3) が成り立つ。
証明.φ=0ならば、すべてのr>0に対してMrφ=0であり、滑らかさ、台、および二つの収束はいずれも直ちに成り立つ。以下ではφ=0とする。
K=suppφとおく。このときKは空でないコンパクト集合であるから、φは有界であり、Kは有限 Lebesgue 測度をもつ。式 (1.2.1)の被積分関数はz∈/Kで0となり、K上で有界である。したがって、各xに対して式 (1.2.1)の積分は絶対収束する。
ejを第j座標方向の単位ベクトルとする。固定したxとjに対して、
h(Mrφ)(x+hej)−(Mrφ)(x)=∫Kφ(z)hηr(x+hej−z)−ηr(x−z)dλd(z).(1.2.4) ∣h∣≤1のとき、差商に現れる点はコンパクト集合
{x+tej−z∣∣t∣≤1, z∈K}に属する。∂jηrはこの集合上で一様連続である。したがって、一変数の平均値の定理をt↦ηr(x+tej−z)へ適用すると、式 (1.2.4)の差商は∂jηr(x−z)へz∈Kについて一様に収束する。ゆえに
∫Kφ(z)(hηr(x+hej−z)−ηr(x−z)−∂jηr(x−z))dλd(z)≤∥φ∥∞λd(K)z∈Ksuphηr(x+hej−z)−ηr(x−z)−∂jηr(x−z)⟶0.したがって、
∂j(Mrφ)(x)=∫Kφ(z)∂jηr(x−z)dλd(z).(1.2.5) 任意の多重指数αに対して∂αηrは連続である。同じ議論を式 (1.2.5)へ繰り返すと、
∂α(Mrφ)(x)=∫Kφ(z)∂αηr(x−z)dλd(z)(1.2.6) を得る。式 (1.2.6)の右辺の連続性も、∂αηrのコンパクト集合上一様連続性と同じ積分評価から従う。よってMrφはC∞級である。
x∈/K+B(0,r)ならば、すべてのz∈Kに対してx−z∈/B(0,r)であり、ηr(x−z)=0である。したがって、
supp(Mrφ)⊆K+B(0,r).(1.2.7) 右辺はコンパクト集合K×B(0,r)の連続像であるからコンパクトである。式 (1.2.6)と式 (1.2.7)によりMrφ∈Cc∞(Rd;K)である。
Lebesgue 測度の平行移動不変性§E9.16 定理 6.1により、非負可測関数hに対して
∫Rdh(z−x)dλd(z)=∫Rdh(z)dλd(z)(1.2.8) が成り立つ。実際、平行移動による像測度は Lebesgue 測度と一致するので、§E9.12 定理 1.3 (1)を適用することができる。ηrは偶関数であるから、式 (1.2.8)により
∫Rdηr(x−z)dλd(z)=∫Rdηr(z−x)dλd(z)=1.(1.2.9) 式 (1.2.1)と式 (1.2.9)から
∣(Mrφ)(x)−φ(x)∣≤∫Rd∣φ(z)−φ(x)∣ηr(x−z)dλd(z).(1.2.10) 台がコンパクトな連続関数はRd上で一様連続である。実際、台を含む閉球を一つ固定し、その半径を1だけ増やした閉球上では Heine–Cantor の定理を用いることができる。この閉球の外にある点を含む十分近い二点については、両方の関数値が0である。この二つの場合を合わせると全空間での一様連続性を得る。したがって、
ωφ(r)=sup{∣φ(z)−φ(x)∣∣x,z∈Rd, ∣x−z∣≤r}⟶0(r↓0).ηr(x−z)=0ならば∣x−z∣<rであるため、式 (1.2.10)と式 (1.2.9)から
∥Mrφ−φ∥∞≤ωφ(r)⟶0を得る。これが式 (1.2.2)である。
0<r≤1とする。式 (1.2.7)により、φとMrφの台はともに固定したコンパクト集合
L=K+B(0,1)に含まれる。λd(L)<∞であるから、
∥Mrφ−φ∥pp≤λd(L)∥Mrφ−φ∥∞p⟶0.したがって、式 (1.2.3)が成り立つ。▨
定理 1.3. 従属選択公理を仮定する。d≥1、K∈{R,C}、および1≤p<∞とする。Cc∞(Rd;K)はLp(Rd,Ld,λd;K)で稠密である。
証明.[f]∈Lp(Rd;K)とε>0を任意にとる。§E9.22 定理 3.3により、φ∈Cc(Rd;K)で
∥f−φ∥p<2εを満たすものが存在する。補題 1.2により、十分小さいr>0に対して
∥φ−Mrφ∥p<2εであり、Mrφ∈Cc∞(Rd;K)である。三角不等式から
∥f−Mrφ∥p≤∥f−φ∥p+∥φ−Mrφ∥p<εを得る。▨
2 平行移動と Fourier 変換
命題 2.1. 従属選択公理を仮定する。d≥1を整数、K∈{R,C}、1≤p<∞とする。f∈Lp(Rd,Ld,λd;K)とh∈Rdに対して(τhf)(x)=f(x+h)と定めると、τhはLp上の線形等長写像であり、
h→0lim∥τhf−f∥p=0が成り立つ。
定理 2.2. 従属選択公理を仮定する。f∈L1(R,L1,λ1;C)とする。任意のt∈Rに対して
f(t)=∫Rf(x)e−itxdλ1(x)は定義され、∣t∣→∞のときf(t)→0である。
3 円周上の連続関数の稠密性
定理 3.1. 従属選択公理を仮定する。T=R/(2πZ)を円周とし、商写像をq:R→Tとする。円周上の正規化 Lebesgue 確率測度mは、I=[−π,π)上の測度(2π)−1λ1∣Iのq∣Iによる像測度とする。可測集合族は{A⊆T∣q−1(A)∩I∈L1}とする。K∈{R,C}および1≤p<∞に対して、C(T;K)はLp(T,m;K)で稠密である。
証明.f∈Lp(T,m;K)の有限値可測な代表元を一つとり、F:R→KをI上でf∘q、Iの外で0と定める。§E9.12 定理 1.3 (1)により
∫R∣F∣pdλ1=2π∫T∣f∣pdm<∞.連続関数χ:R→[0,1]を、∣x∣≤πで1、π<∣x∣<2πで2−∣x∣/π、∣x∣≥2πで0と定める。ε>0に対して、§E9.22 定理 3.3により
∥F−g∥Lp(R)<ε(2π)1/p31/p−1を満たすg∈Cc(R;K)をとり、u=χgとおく。χF=Fであるから∥u−F∥p≤∥g−F∥pであり、uの台は[−2π,2π]に含まれる。
G(q(x))=k∈Z∑u(x+2πk)と定める。この和は局所有限であり、添字をずらすと2π周期性が従う。したがって、Gは円周上の連続関数である。一方、各x∈Iに対して∑k∈ZF(x+2πk)=f(q(x))である。u−Fの台が[−2π,2π]に含まれるので、固定したx∈Iに対する差の和には高々三つの非零項しかない。三項の Hölder の不等式(p=1では三角不等式)と、区間I+2πkがRを分割することから、
∥G−f∥Lp(m)p≤2π3p−1∫Ik∈Z∑∣u(x+2πk)−F(x+2πk)∣pdλ1(x)=2π3p−1∥u−F∥Lp(R)p<εp.積分の等式には§E9.11 系 1.2と式 (1.2.8)を用いた。よって主張が成り立つ。▨
4 無限大の指数における反例
例 4.1. 従属選択公理を仮定し、d≥1を整数とする。Rd上の実数値定数関数1はL∞(Rd,Ld,λd;R)に属する。一方、任意のg∈Cc(Rd;R)はコンパクトな台の外で0であるため、∥1−g∥∞≥1である。よって、Cc(Rd;R)はL∞(Rd,Ld,λd;R)で稠密でない。この例により、有限なpの証明で用いた有限測度の台による評価をp=∞へ移すことはできない。
5 演習
問題 5.1. 従属選択公理を仮定し、d≥1を整数、1≤p<∞とする。[f]∈Lp(Rd,Ld,λd;K)とh∈Rdに対して(τhf)(x)=f(x+h)とおく。[τhf]∈Lpかつ∥τhf∥p=∥f∥pであること、およびh→0のとき∥τhf−f∥p→0であることを示し、命題 2.1の証明を完成させよ。また、d=1、p=∞、f=1(0,∞)について、すべてのh=0で∥τhf−f∥∞=1であることを示せ。
解答.
T(x)=x+hとおく。§E9.16 定理 6.1により、任意のE∈LdについてT−1(E)=E−h∈Ldであるから、Tは(Ld,Ld)可測であり、§E9.7 命題 1.2によりτhf=f∘Tは可測である。f∼gの例外集合をZとすると、τhfとτhgは零集合Z−hの外で一致するので、[τhf]は代表元に依存しない。式 (1.2.8)を非負可測関数∣f∣pとx=−hに適用すると
∫Rd∣f(z+h)∣pdλd(z)=∫Rd∣f(z)∣pdλd(z)であるから、[τhf]∈Lpかつ∥τhf∥p=∥f∥pである。
ε>0をとる。§E9.22 定理 3.3により、φ∈Cc(Rd;K)で∥f−φ∥p<εを満たすものが存在する。suppφ⊆B(0,R)を満たすRをとり、L=B(0,R+1)とおく。φはRd上で一様連続であるので(L上では§E2.9 定理 5.1により一様連続であり、距離1未満の二点の一方がLの外にあれば両方の値が0である)、ω(r)=sup{∣φ(x)−φ(y)∣∣∣x−y∣≤r}はr↓0のとき0に収束する。∣h∣<1ならばτhφ−φはLの外で0であり、絶対値はω(∣h∣)以下であるから
∥τhφ−φ∥p≤ω(∣h∣)λd(L)1/pである。τhは線形であり、前段により∥τh(f−φ)∥p=∥f−φ∥pであるから、§E9.21 定理 6.1により
∥τhf−f∥p≤∥τh(f−φ)∥p+∥τhφ−φ∥p+∥φ−f∥p<2ε+ω(∣h∣)λd(L)1/pである。λd(L)<∞であるから、∣h∣が十分小さいとき右辺は3ε未満である。εは任意であるから、∥τhf−f∥p→0である。
d=1、f=1(0,∞)とする。h>0ならばτhf−f=1(−h,0]であり、h<0ならばτhf−f=−1(0,−h]である。いずれも絶対値は正の測度∣h∣の集合上で1、その外で0であるから、∥τhf−f∥∞=1である。▨
問題 5.2. 従属選択公理を仮定する。[f]∈L1(R,L1,λ1;C)とt∈Rに対して
f(t)=∫Rf(x)e−itxdλ1(x)とおく。この積分が定義されることを示し、定理 2.2の証明を完成させよ。
解答.
x↦e−itxは連続であるから可測であり、f(x)e−itxは可測で∣f(x)e−itx∣=∣f(x)∣である。したがってこの関数は可積分であり、f(t)は定義される。また、§E9.10 補題 2.5により∣f(t)∣≤∥f∥1であり、fはfについて線形であるから、[f],[g]∈L1について∣f(t)−g(t)∣≤∥f−g∥1である。
φ∈Cc∞(R;C)とし、suppφ⊆[−R+1,R−1]を満たすR>1をとる。φとφ′の実部と虚部は[−R,R]上で連続であるから、§D1.17 定理 2.5と§E9.17 系 5.2により、φ(x)e−itxとφ′(x)e−itxのλ1に関する積分は[−R,R]上の Riemann 積分に等しい。t=0とすると、積の微分法により
dxd(φ(x)−ite−itx)=φ′(x)−ite−itx+φ(x)e−itxであり、実部と虚部に§D1.19 定理 2.1を適用してφ(±R)=0を用いると
∫−RRφ(x)e−itxdx=it1∫−RRφ′(x)e−itxdxを得る。したがって∣φ(t)∣≤∣t∣1∫−RR∣φ′(x)∣dx≤∣t∣2Rsup∣φ′∣であり、∣t∣→∞のときφ(t)→0である。
一般の[f]∈L1について、ε>0をとる。定理 1.3により∥f−φ∥1<εを満たすφ∈Cc∞(R;C)が存在する。前二段により
∣f(t)∣≤∣f(t)−φ(t)∣+∣φ(t)∣<ε+∣φ(t)∣であるから、limsup∣t∣→∞∣f(t)∣≤εである。εは任意であるからf(t)→0である。▨